神秘


 「神秘」、goo辞書によりますと、《[名・形動]《古くは「じんぴ」とも》人間の知恵では計り知れない不思議なこと。普通の認識や理論を超えたこと。また、そのさま。「宇宙の―を探る」「―な美」 [派生]しんぴさ[名] 》とあります。

 小学校の理科の時間に、自然の成り立ちを学んでいたときに、驚いたことを思い出します。地球と太陽の距離、光や熱をそこから受けていること、引力、地球の傾き、地球が天空に浮いている惑星であること、エンジン動力を持たないのに回転し動いていること、空気の濃度、太陽の照度、雨の降る量、日本には四季が明確にあること等々、その自然の不思議さ、驚異に目を見張ったのが昨日のことのように感じられます。何よりも不思議なのは、不思議に思う人間の存在でした。本当に核、アメーバー、小生命体、猿、類人猿、私という順序に変わってきたのだということは、どうしても信じることができませんでした。飛行機を発明し、月に足跡を記し、ペニシリンを作り出すほどの驚異的な能力を持つ人間、悲しんだり喜んだり怒ったり笑ったり妬んだりし、字を書いたり詩を作ったり本を編集する人間、言葉を持って交流する人間、平和を願ったり戦争をしたりする人間、その様な高尚な理知的な人間の始まりが、そんなものだとは決して納得できなかったのを思い出します。こういった自然界にみられる《神秘》の前に、ただただ驚愕していたのです。

 これまで自分の人生に起こったこと、生まれた日本の国に起こったこと、更には全世界・全宇宙に起こってきたこと、そういったことを、今回の東日本大震災の悲惨さを見聞きして改めて考えさせられております。近年異常気象が世界中でみられますが、統計を調べてみますと、
【日本】   最高気温・2007年に多治見市と熊谷市で記録した40.9℃、最低気温・1902年に旭川で-41.0℃、最多降水量(一日)・1982年8月に奈良県上北村日出岳で844mm、最高震度地震・2011年3月11日14時46分頃 に透刻地方太平洋沖で Mw9.0 、最大瞬間風速・1966年9月5日(台風18号) に宮古島で85.3m/s
【世界】  最高気温・1927年にイラクのバスラで58。8℃、1983年に最低気温・南極のボストーク基地で-82.9℃、最多降水量・1952年3月15日から16日にかけてフランスの海外寮レニュオン島シラオス で1870mm、最高震度地震・1960年5月22日に南米チリ西岸でMw9.5(最大被害地震・1556年1月23日に中国今日最初で起こった「華県地震」で82万人から83万人の死者)、最大瞬間風速・1934年9月12日 にアメリ合衆国のワシントン山で231mph(103.3m/s、)
といった気象観測の記録がありました。

 こういった記録を思い起こして、どうして最高最低気温が100度や-150度、降水量が300mm、地震の震度が20MWになったりしないのだろうかと思うのです。何か大きな力が押しとどめ、限界点が定められているように思えてならないのです。太陽と地球の距離だって、もう少し近かったら地球は火の海になるでしょうし、遠ければ凍土に化してしまうはずです。空気中の成分だって、窒素(体積比で78.084 )と酸素(同20.946 )と二酸化炭素(同00.032 )によって成り立っているのだそうですが、この成分の比率の均衡が狂ったら、人は生きて生けなくなるのではないでしょうか。それなのに均衡が保たれているのは、何なのでしょうか。何によるのでしょうか。偶然なのか、それとも必然なのでしょうか。これこそが《神秘》ではないでしょうか。どんなに科学技術が進歩して、速度や震度や量や成分を見極めることができても、これらの限界を定めている《神秘》には驚嘆させられてならないのです。

 その均衡が、近年、狂ってきているのではないでしょうか。「普通の認識や理論を超えたこと」が頻発しているのではないでしょうか。ぎりぎりの限界点を超えて起こる事象が、脅威的になってきています。今回の東日本大震災の被害は、俳人芭蕉が愛でた三陸海岸の海岸線の美しさを、壊滅的に壊してしまったのではないでしょうか。自然は再生しますが、人の心の不安や恐怖はなかなかぬぐい去れないのではないでしょうか。どなたかが言われたような「天罰」ではないと思いますが、自然界が、追い込まれて悲痛な叫び声を挙げているのが、今回の出来事なのかも知れないなと思うのです。私たちに必要なのは、自然と和らいで共生することに違いありません。あんなに美しいこの日本の自然の景観が、どれほど生きていくために励みであったかを思い起こし、感謝しているところです。この日本の美、大自然の美の均衡が保たれ、この国土に生きる人々のさらなる励みとなるようにと、2011年の黄金週間の只中、PCの前でキーを叩きながら、独り住まいの私の願うところであります。

(写真は、実に美しい「三陸の海岸線」です)