春の風物詩

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 この栃木の街に初めて来ました時に、この舟に乗せていただきました。江戸初期から明治まで、舟運に使われた「都賀舟」なのです。いまでは二十ほどに席が設けられ、観光客が乗船している姿を見せています。一周すると、船頭さんが美声を聞かせています。

栃木河岸より都賀舟で
流れにまかせ部屋まで下りゃ
船頭泣かせの傘かけ場
はーあーよいさーこらしょ

向こうに見えるは春日の森よ
宮で咲く花栃木で散れよ
散れて流れる巴波川
はーあーよいさーこらしょ

 これは「栃木河岸船頭唄」です。昔は、舟の船頭さんを、「水主(かこ)」と呼んだそうで、きっと哀調のあふれた水主唄を歌いながら、わがやの眼下の流れを上り下りしたのでしょう。目をつぶると、瀬音に乗って舟唄が聞こえてきそうです。まさか、流れの辺りに、こんな鉄筋造の大きな建物が建つなどとは、水主さんたちには思いもよらなかったことでしょう。

 観光シーズンに入ったのでしょうか、冬場はちらほらとしか見かけませんでしたが、街中も、この都賀船も人が多くなってきています。県下の鬼怒川も那珂川も、同じような舟運が盛んに行われ、驚くほどの量の物流が行われていたようです。前の大家さんの家も、舟運をされておいでで、その帳簿や家紋の入った半纏などを見せていただいたことがありました。

 5月の節句に合わせてでしょうか、鯉のぼりが川の両岸の支柱に結んだ綱に繋げられて、春の風を受けて、空中を泳いでいるかのようです。これが春の巴波川の河岸だったあたりの毎年の風物詩になっています。

(春の陽を浴びた巴波川の流れです)

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