そよ風の吹くのを待つ

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『わがたましいよ。主をほめたたえよ。わが神、主よ。あなたはまことに偉大な方。あなたは尊厳と威光を身にまとっておられます。あなたは光を衣のように着、天を、幕のように広げておられます。水の中にご自分の高殿の梁を置き、雲をご自分の車とし、風の翼に乗って歩かれます。風をご自分の使いとし、焼き尽くす火をご自分の召使いとされます。(詩篇104篇1~4節)」

 「たきび」の歌の三番に、「こがらし」が出てきます。

こがらし こがらし さむいみち
たきびだ たきびだ おちばたき
「あたろうか」「あたろうよ」
そうだん しながら あるいてく

 「こがらし」、冬になると人を屈めさせ、背を丸くさせ、上着の襟を立たせさせる冬風のことです。今年は、まだ木枯らしの吹く前に、寒波襲来で、ここ栃木市でも、マイナス4℃にも気温が下がりました。足元から這い上がってくるような寒さに、震えるほどです。この木枯らしを「凩」と言う感じで表記する様です。それでも、今日は強烈な風が吹き荒れ、巴波川の観光船が運航をやめていました。日本海側は大雪に見舞われた地が広くあります。

 この「風」ですが、季節ごとに、地域ごとに、様々な風が吹く様です。私たちが子育てした街は、「八ヶ岳おろし」の寒風が吹き降りて来て、半端ない寒さで縮み上がらせてくれました。これを「颪(おろし)」と書くのだそうです。

 今や、いつ止むとも知れずに、「戦争の風」、「不景気の風」が、ロシアの方から吹き始めて、世界中を巻き込んで、吹き荒れています。世界中で、〈寒け〉を感じてしまっています。それで「風」だって、歓迎される風だってあるわけです。そこで、「風」を取り上げてみたいのです。

人は誰も ただ一人旅に出て
人は誰も ふるさとを振りかえる
ちょっぴりさみしくて 振りかえっても
そこにはただ風が 吹いているだけ
人はだれも 人生につまずいて
人はだれも 夢破れ振りかえる

プラタナスの 枯葉舞う冬の道で
プラタナスの 散る音に振りかえる
帰っておいでよと 振りかえっても
そこにはただ風が 吹いているだけ
人は誰も 恋をした切なさに
人は誰も 耐え切れず振りかえる

何かをもとめて 振りかえっても
そこにはただ風が 吹いているだけ
振りかえらず ただ一人一歩ずつ
振りかえらず 泣かないで歩くんだ
何かをもとめて 振りかえっても
そこにはただ風が 吹いているだけ
吹いているだけ 吹いているだけ

 私の世代のフォークソング・グループ、シューベルツが歌ったものに中に、「風」がありました。この曲は、一世を風靡したのですが、はしだのりひこがリーダーでした。同学年で、同志社大学で神学を学んだということで、関心を向けたことがありました。5年ほど前に亡くなっていて、同世代も、そんな時をあ迎える年齢になったのだと思わされたことでした。
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 北風に変わって、春の到来を告げる風を、「春一番」と言います。氷が溶けると北国では春ですが、関東などでは、最近は観測されないで、無発表のまま、春になっている年がある様です。中国では、北にいても南に住んでいても、「春節chunjie」が、待ち遠しい春をもたらしていました。

 東の方に移っていって吹いてくるのが、「東風(こち)」です。梅の花の香を匂い起こすと言って有名なのです。南風は、「はえ」とよぶそうで、梅雨が明ける頃の風を、九州地方では、「白南風(しらはえ)」と呼ぶのだそうです。

 また、「いなさ」と呼ばれる風があります。台風の時期に、強く吹く南東の風のことで、四国や中国地方から東の地域で、呼ばれる様で、漢字表記は、「東南風」です。農業や漁業に従事する人たちには、豊作や豊漁をもたらすと言って歓迎されているのです。それに反するように、静岡県などでは、強風被害をもたらすとして、警戒されている風で、「辰巳風(たつみかぜ)」とも言われています。

 瀬戸内地方から伊豆地方にかけて太平洋沿岸の各地では、「まぜ(真風)」と呼ぶ、春から夏に、南から吹く弱い季節風があります。

 また「山背(やませ)」と言う風もあります。関東から東北、北海道にかけて、夏に、東から吹く風です。歓迎されない冷風で、冷害や凶作をもたらす、農作物には敵の風です。秋の稲作などの収穫が危ぶまれ、農夫の顔を曇らしてきた風だったのでしょう。

 寛永、享保、天保の頃には、「江戸三大飢饉」と呼ばれる飢饉がありましたが、「山背」が吹いたのでしょうか。米の不作、年貢米不足、米価の高騰など、農民に打撃を与え、「一揆(いっき)」などが起こっています。歌で歌われる様なことにない、歓迎されない風には、吹いてもらいたくないものです。

 さらに、最近は、日本でも「竜巻」の現象が見られ、被害があります。これは積乱雲の発生などの前兆が見られます。これに対して「つむじ風」は、「竜巻」のように雲を伴うことはないのです。晴れた日に強い日射で地面が暖められて発生することが多く、「竜巻」よりもずっと小規模です。 風速もそれほど強くはないですが、それでもテントなどを巻き上げる力はありますから注意は必要です。「つむじ風」は晴天時にいきなり発生することが多いようです。

 寒波襲来、収まらない新型コロナ感染、インフルエンザの流行の気配、それにウクライナ戦争、ミャンマーの政情不安などの年末ですが、私の歓迎するのは、春を呼ぶ「そよ風」です。頬をやさしくくすぐる様な風で、そんな心地よさを感じたいと、切に願っています。

 さあ、主は、どんな風を、これからの時代、この地上に向け、吹かされることでしょうか。

(「北風小僧の寒太郎」、「そよ風」です)

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