主(ぬし)を待つ

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こちらに来ましてから、専用のコーヒーカップを、新たに買いました。家内用には小型の花柄、自分用には無地のマグカップです。箸は、中国の家で使っていた物を、入院用に、また退院してから使おうと、持って来たのです。

ところが、入院中の食事は、箸付きで不要とのことで、滞在先の家に、主の帰りを待ちながら置いてあります。マグカップは、落としても割れてもよいように、プラスチック製の物を使っていて、家に残してあります。

この家には、高価な茶碗やお皿やコーヒーカップや湯呑みが、壁一面の茶箪笥に、飾るようにして置かれてるのです。きっとご両親が、趣味で蒐集された物なのかも知れません。

さて、主のいない間、マグカップは次女の婿殿が、箸は孫娘が使っています。孫たちが喜んでいることがあります。好物の納豆を毎食、ワンパック全部、自分で食べられるからです。その納豆を、その箸で上手に、辛子と出汁を加えてかき混ぜて、炊きたてのご飯にのせて、またかき回して、箸で美味しそうに食べるのです。やはり爺の血なのでしょうか。

婿殿たちは、妻が日本人なので、二本の小枝のような箸を使って、食事をしていて、二人とも上手に、何でもつかむことができます。手の指を開いた形のフォーク、指を閉じた形のスプーンで育ったのに、けっこう技術を要する箸を使えるというのを楽しんでいるのです。

桜の咲く頃までに、家内は、病を克服して退院してくるのを、心から願っています。そして、多くの友人たちが待つ、中国の華南の街に、帰れると願っております。

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