秋トマトが育って

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 猛烈な暑さがおさまりかけた頃でした、咲き終わった鉢から芽が出てきて、そんなに気に留めなかったのですが、スクスク育っていくではありませんか。緑色の草が大きくなると、なんだかトマトの様な葉を見せて来たのです。その葉の匂いを嗅いで見ると、まさしくトマトでした。

 その枝の先に、黄色い花が咲き始めたのです。しばらく経つと、丸い実ができ始め、少しずつ大きさを増していくではありませんか。11月16日、今朝ベランダに出てみると、ミニトマトほどの丸みをおびた緑色の実に生長しているのです。

 今朝6時の気温は、6℃の中、しっかりとした実が目に入り、スマホを取り出してきて撮影してみました。はたして、霜が降る前に、赤みを着くでしょうか。寒い地域だと、今朝はもう零下5℃だ、とのニュースを聞きましたから、赤く熟すことはないのでしょう。でもしっかり鉢の土に、根を張っているのが分かります。始まりは細っピーの枝でしたが、今では、しっかり土を掴まえていて、離しません。

 その生き生きとしたトマト を眺めると、真っ青な、未熟な頃の自分を思い出してしまっているのです。背伸びの時期でしょう。中学3年間の担任が、髭の濃い先生で、『男は、髭の剃り跡の青さが紋章なんだ。男の子は髭の濃い男になりなさい。女性にモテる様にもなるから!』と言ったことがあって、なおさらそうなりたかったのです。それと、父の様な髭の濃い男になりたくて、風呂に入る度に、父の安全剃刀で、鼻の下や顎を、父がしている様に剃ったのです。ちょっと大人になった様な、背伸びをした気持ちを楽しんでいたのでしょう。

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 その剃刀は、フェザー製の刃で、父は、髭剃りを終えると、ガラスコップの中に水滴をつけて、右手の人差し指で、丸みに合わせて左右に動かして、その刃を磨き研ぐのです。あんなに大事に、一枚の歯を指にして、手入れをして、物を大切にするんだと思って感心したのを思い出します。どうも父には届かずの今です。

 中1の夏に、臨海学校に行った時、級友たちと一緒に風呂に入った時、体格の大きな同級生は、もう生えていて、自分が遅れている様に感じて、劣等感に苛まれていました。それでもケンカだけは強かったのです。チビで奥手の自分だったのに、それでも、いつも間にか、性徴期を迎えたのでしょう、上と下と脇の下に体毛が生えてきたのです。

 そんな思春期があって、青い子が、黒ずんできて、大人の仲間入りは複雑な思いでした。ベランダの青いトマトと、十代初めの自分がoverlapしてきてしまいました。間もなく本格的な冬がくることでしょう。冬用の上着などを、ちょうど昨日出したところです。

(“いらすとや”のトマトです)

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