キャッチ・コピー

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 学校の行き帰りに、中央線に乗っていた時、吉祥寺か阿佐ヶ谷あたりで、新宿に向かう上り電車の左手に、質屋の看板が見えました。たしか、『遠くの親戚よりも、近くの◯◯!』と書いてあったと思います。下車して、〈質草〉を持ってやって来るようのとの宣伝文句でした。なんとなく説得力のある広告だと、感心したものです。ほんの少しのことばで、相手の心を掴んでしまう、「キャッチ・コピー」には、面白いものがあります。日本のテレビのコマーシャル(宣伝)は、実に優れているものが多いのだそうです。奇想天外で、何を意味しているのかわからないようなものもありますが、最近の若い作成者のセンスの好さに驚かされています。そういったキャッチ・コピーのコピーが世界で使われているようです。

 小さい頃に、テレビの放映が始まり、父の家では、皇太子と美智子さんの「結婚式」があった頃に、テレビを買ったと思います。その頃、『S、0、N、Y・・・SONY!』というフレーズが、聞こえてきました。いまだに覚えています。また、『マルコメ マルコメ・・・味噌!』も記憶の中に残っているのですが。まあ、その頃のコマーシャルの原型は、アメリカのテレビの中からのコピーが多かったと思われますが、流石、日本では、それをたたき台に、独特なものを創り上げてきているわけです。

 国道52号線を清水まで走っていく山間部に、『子ども叱るな来た道じゃ 年寄り笑うな行く道じゃ!』という立て看板を見て、ほんとうに納得させる標語だと思ったことがありました。ちょうど子育て真っ最中にでしたから、そこを頷いて通過しました。老境に至った今、笑われないように生きようと覚悟をしているところです。今年、召された母が、ちょっと頓珍漢なことを言ったことがありましたが、それを聞いてた私は、つい笑ってしまいました。申し訳ないことをしたなと思いきや、今度は我が番だと思っております。

 ビートたけしでしたか、『赤信号 みんなで渡れば こわくない!』がありましたが、漫才ネタだけあって、実行してはいけないキャッチでした。また、『この土手を 登るべからず 警視庁!』というのがあって、調子が好すぎるので、つい登ってしまいそうで、クレームが付いたようですが。とても好いと思ったのが、『狭い日本 そんなに急いで どこへ行く!』でした。

 さて、人気が凋落し、自信を喪失してしまった「日本」を、元気付けるキャッチコピーに、なにか良いものがあったらいいのだが、と思っているのです。『物づくりニッポン!』だけではなく、世界の眼と耳を釘付けにしてしまうようなキャッチ・コピーがあったらいいのですが。また、子どもたちが誇りを持って生きていけるように、彼らを勇気づけるものがあったらいいと思っております。

 そういう意味で、マスコミには責任があると思います。ナチスドイツに、ゲッペルという宣伝相がいて、ヒトラーの演説文句の創案者だったそうです。ヒトラーは名演説家でありました。あの堅実なドイツ国民を、上手にコントロールした、魔的な演説は、力強いだけではなく、人心を収攬し、同じ方向に向け直してしまう様な、超人間的な能力が込められていました。それに加えて、ゲッペルの介入は、ヨーロッパを闇の中に引き込んでいったのです。

 このことは、警鐘として鳴らさないといけないと思われます。魔的な能力者が、マスコミを支配したら、また暗黒の時代がやってこないとは限りません。権力におもねないで、吟味され、精査された報道が、日本の社会の中でなされていくことを願うのです。それは国民が安心して生活していけるようになるためであることは、もちろんのことであります。商品を売るためのキャッチも、品があって、ユーモアのあるのがいいですね。そう、「日本」の・・・・。

(写真は、道路の押しボタン式の「信号」です)

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