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作詞が大高ひさを、作曲が久我山明の「カスパの女」は、次の様な歌詞の歌でした。1955年(昭和30年)」、小学校6年の時でした。
涙じゃないのよ 浮気な雨に
ちょっぴりこの頬 濡らしただけさ
ここは地の果て アルジェリヤ
どうせカスバの 夜に咲く
酒場の女の うす情け
歌ってあげましょ わたしでよけりゃ
セーヌのたそがれ 瞼の都
花はマロニエ シャンゼリゼ
赤い風車の 踊り子の
いまさらかえらぬ 身の上を
貴方もわたしも 買われた命
恋してみたとて 一夜(ひとよ)の火花
明日はチュニスか モロッコか
泣いて手をふる うしろ影
外人部隊の 白い服
よくラジオで流れていた、こ歌の中に、『♯明日はチュニスかモロッコか・・・外人部隊♭』と言う歌詞があって、その語句が強烈に思いの中に記されているのです。年配の女性歌手が、少し気だるく歌うのですが、まだ思春期前夜、恋だとか愛に関心の湧くちょっと前のことです。
『アルジェリアってどこ?』、『チュニスってどこ?』、『モロッコってどこ?」』、『外人部隊ってなに?』、そう思って、地図帳で調べたのです。地中海に面したアフリカ大陸の北に位置していて、もう直ぐに、『行ってみたい!』と言う思いに駆られていました。
ウクライナへの攻撃のニュースを聞いて、世界中から、その「外人部隊」への志願があると、ニュースが伝えています。ゼレンスキー大統領の要請に応えて、日本でも、自衛隊員だった方たちが、大使館に願い出たそうです。彼らを「義勇兵」と呼ぶのだそうです。
戦争を避ける人、戦士として祖国のために戦う人、外国から戦争に参加する人、様々な想いが錯綜している今、病人や幼子などが犠牲になっているニュースには、居た堪れないものがあり、どうすることもできないジレンマも感じてしまいます。一番は、〈悲しみ〉が溢れ出るようです。
私には父の弟の叔父がいて、会ったこともないのですが、徴兵されたのでしょう、南方戦線で戦死したと聞いています。祖国のためであって、外人部隊ではなく日本軍に従軍したわけです。
弟の書架に、どうして手に入れたのか聞いたことがないのですが、叔父の名と、学んだ大学の名の記された岩波文庫本がありました。戦前の学生が読んでいた文庫本には、知識欲を満たしてくれるものが多くあって、若者が好んで読んだわけです。「読書子に寄す〜岩波茂雄〜」と言う一文があります。
『真理は万人によって求められることを自ら欲し、芸術は万人によって愛されることを自ら望む。かつては民を愚昧ならしめるために学芸が最も狭き堂宇に閉鎖されたことがあった。今や知識と美とを特権階級の独占より奪い返すことはつねに進取的なる民衆の切実なる要求である。
岩波文庫はこの要求に応じそれに励まされて生まれた。それは生命ある不朽の書を少数者の書斎と研究室とより解放して街頭にくまなく立たしめ民衆に伍せしめるであろう。近時大量生産予約出版の流行を見る。その広告宣伝の狂態はしばらくおくも、後代にのこすと誇称する全集がその編集に万全の用意をなしたるか。千古の典籍の翻訳企図に敬虔の態度を欠かざりしか。さらに分売を許さず読者を繋縛して数十冊を強うるがごとき、はたしてその揚言する学芸解放のゆえんなりや。
吾人は天下の名士の声に和してこれを推挙するに躊躇するものである。このときにあたって、岩波書店は自己の責務のいよいよ重大なるを思い、従来の方針の徹底を期するため、すでに十数年以前より志して来た計画を慎重審議この際断然実行することにした。吾人は範をかのレクラム文庫にとり、古今東西にわたって文芸・哲学・社会科学・自然科学等種類のいかんを問わず、いやしくも万人の必読すべき真に古典的価値ある書をきわめて簡易なる形式において逐次刊行し、あらゆる人間に須要なる生活向上の資料、生活批判の原理を提供せんと欲する。
この文庫は予約出版の方法を排したるがゆえに、読者は自己の欲する時に自己の欲する書物を各個に自由に選択することができる。携帯に便にして価格の低きを最主とするがゆえに、外観を顧みざるも内容に至っては厳選最も力を尽くし、従来の岩波出版物の特色をますます発揮せしめようとする。
この計画たるや世間の一時の投機的なるものと異なり、永遠の事業として吾人は微力を傾倒し、あらゆる犠牲を忍んで今後永久に継続発展せしめ、もって文庫の使命を遺憾なく果たさしめることを期する。芸術を愛し知識を求むる士の自ら進んでこの挙に参加し、希望と忠言とを寄せられることは吾人の熱望するところである。その性質上経済的には最も困難多きこの事業にあえて当たらんとする吾人の志を諒として、その達成のため世の読書子とのうるわしき共同を期待する。 昭和二年七月 』
夢を持って学んで、妻子を得て、家庭を築き、社会的な貢献も果たそうと、叔父は思ったに違いありませんが、夢を叶えることなく果てたのです。ウクライナでも、多くの青年が夢を破られ、侵攻のロシア軍の若者も戦死しています。なぜ人は愚を繰り返すのでしょうか。なぜ学ばないのでしょうか。戦争放棄の国、日本も再び戦争に関わるのでしょうか。
東京大学協同組合出版部が、「きけわだつみのこえ」を出版し、今でも、岩波書店刊で買って読めます。戦没学徒の手記です。80年近く前の若者たちの心の思いを知ることができます。重くて悲しい歴史の一頁です。
(モロッコの砂漠です)
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