カカシ

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 「案山子」と書いて、「かかし」と読ませます。水上(みなかみ)の宿に泊まっている夕方、陽が落ちた、だいぶ向こうの田んぼの上で、何かが跳ねている様に見えました。ずいぶん rhythmical  に跳ねる様なので、何だろうと思っていました。そう、カカシだったのです。

 田んぼの稲とカカシの組み合わせを、もう忘れてしまっていたから、訝しがったわけです。そういえば、街の有線放送で、『稲の害虫駆除のために薬剤を散布するので、窓を閉め、洗濯物は屋外に干さないで!』と announce が、その朝ありました。近代農業は、人体に有毒な農薬を散布するのです。

 栃木や群馬や茨城の地域で、「四つ葉生協」と言う働きがあります。友人の勧めで会員になって、食材の配達をしていただく様になりました。低農薬や有機農法の栽培による野菜、保存料を使っていない食材を選び、マーガリンや食用油を使わないでいます。極力安全を第一に、原料選びで製造している会社からの物を購入しているのです。

 その会報に、長年、普通一般の製法で米栽培をしてこられた方の投稿がありました。ある時から、人体に有害な農薬使用をやめて、安全農法でお米を作ってきたのだそうです。しかし、この方の訃報がありました。それまでの農薬使用の結果で、まだ七十代はじめで亡くなられていました。安全農法を推進してきた指導的な方でした。

 私たちは、もう長くは生きないと思いますが、極力安全さを求めて、食生活をしようと心掛けています。〈安さ〉ではなく、手をかけている分、ちょっと高価になりますが、そう言った安全農法をしようとされている農家を応援する意味でも、そこから買おうと努めています。農薬ではなく、古法のカカシで、稲を食い荒らす鳥を追い払っていたわけです。作詞が武笠三、作曲者不明で、1910年(明治44年6月)に発表された「尋常小学唱歌」です。

山田の中の一本足の案山子
天気のよいのに 蓑笠着けて
朝から晩まで ただ立ちどおし
歩けないのか 山田の案山子

山田の中の 一本足の案山子
弓矢で威して 力んで居れど
山では烏が かあかと笑う
耳が無いのか 山田の案山子

 当時、アメリカ領のグアムにいた家内の姉の子が、子育て中のわが家に一年ほどいて、町立の小学校に通っていました。私たちの二番目の子を可愛がろうと、ある時、畑からカカシを担いで帰ってきたのです。それを見た私は、彼を叱ったのです。叱られた彼は、なぜ叱られたか分からずにいました。『自分は従姉妹のためにいことをしたのに!』で、納得がいきませんでした。そのカカシ事件の顛末を思い出してしまう、雨続きの朝です。

(”イラストAC“ のカカシです)

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