心ふるわせて

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大陸で戦火が広がり
目をしばつかせ
その報せに耳たぶをふるわせ
真珠湾の奇襲を
えらいことが起こってしまったと心をふるわせ
焼夷弾を避けて
唇をふるわせて防空壕に走り
焼け落ちる家屋の音に
全身がふるえた

戦争が終わって
食べ物を求めて胃袋をふるわせ
平和な時代がやってきて
自由教育に目をしばつかせ
聞くこと見ることに心がふるえ
進駐軍の青年兵士に
心をふるわせて恋に落ち
嫁いで海を渡り
幸せになれると思いきや
寡婦になって
子二人をしゃにむで育て上げた

戦争花嫁の悲哀を
ふるえる心と舌でなめた過去
それを乗り越えて小さな幸せに心がふるえ
街角の集いに導かれて指をふるわせてピアノを奏で
感動で心をふるわせ
異国の街の人々の愛と好意に心ふるわせ
そして老いを迎えた

大陸に渡った妹のため
なけなしの中から
病でふるえる手元で小切手を書き
ふるえる手で封をし
投函された小切手
何度も何度も支えてくれた義姉
朝霞の郵便局で
書かれた宛名と名前の英文がふるえていて
判読できずに局員の心もふるえ
大金ではないがわずかな支えに
私たちの心がふるえた日々

今朝、その義姉が召されたとの知らせに
家内は覚悟はあったものの絶句し
愛姉の死を悼み
心をふるわせてその別れを受け止め
いのちの付与者の元に立ち帰った姉
ふるえた手も指も足も唇も、
そして心も
今安息の家で
感動にふるえている
再会の望みで空を見上げた家内

Were you there when they crusified Master !

(10/3 満州を走った「アジア号)、「真珠湾のアリゾナ記念館」です)
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