現代社会の一大特徴は、あふれるほどの種々雑多な情報があって、どれが有益で正確であるのかの判断力や選択能力がないと、溺死してしまうにちがいありません。高校時代、台風到来の湯河原の吉浜海岸で、一度溺れ死にそうになったことがあります。どうしてでしょうか。1つは、『泳いではいけない!』との遊泳禁止の指示に従わなかったことが社会的な原因です。2つは、台風が近づいているときの潮の満ち引きの力は、想像を絶するほどに大きいのだという法則に従わなかったことが自然的な原因です。3つは、死ななかった原因ですが、人の力を超えた、自然法則とは相容れない奇跡で、岸に戻されたという神秘的な原因でありました。

  ところで、福島原発の放射能汚染が、深刻な事態を迎えて、世界が戦々恐々としております。昨日、若い友人が訪ねてきて、昼食を共にしました。彼の話によると、『東京以上に危険なのは、北京やローマだそうです。この両都市のほうが放射能の数値は東京よりもはるかに高いレベルです!』と言っておられました。彼は放射能関係の専門家ではありませんが、中国人の彼の知り得た情報でした。日本に留学をし、優秀な成績で日本の株式市場に上場する大手企業に就職が決まったのです。多くの中国人が帰って行く中、彼はこの3月、一時帰国先の古里からご両親に送り出されて、恐れずに東京にやってきて、先日入社式を終え、今は研修中とのことでした。その研修の合間の土曜日の昼過ぎ、代官山の駅で待ち合せ、ハンバーグの美味しい店で家内と3人で昼食を摂りました。彼のご両親には、中国でなんどもご馳走になり、彼の専門知識で私のPCのメンテナンスをしてもらってきました。そんな彼からの《情報》でした。

  NHKのテレビニュースで、原発の事態が、論説委員や専門委員や大学教授によってコメントされていて、視聴しています。産学協同の今日日、問題の渦中にある東京電力は、よくコメントをする大学に対して、相当高額の寄付金を捧げているのだそうです。それで、『事実を歪曲して話している!』、『真に深刻な事態なのに、「今は、人体には影響はありませんとよ!」としか言えない!』と、否定的な見方の情報もあります。もちろん日本や世界が、強烈で深刻な情報を聞いて、パニックに陥り、大混乱しないような配慮は必要ですが、必要不可欠の正しい情報を、すべての日本人、すべての隣国の人々、世界中の人々は願っているのです。正しい情報の提供を渋る理由が、産学の癒着、利権の金銭的な損得にあるなら、私も赦しません。また正しいと誰もが判断し、聞く必要のある情報を、もし操作しているのなら、その操作基準をはっきりと聞きたいものです。

  もう既に亡くなられたのですが、韓国の金大中元大統領が、日本で拉致された経緯について、マスコミの前で話された言葉を思い出します。それは、朴大統領が側近中の側近の部下によって狙撃されて、殺害された事件についてでした。『なぜ、こういった事件が韓国で起こったのでしょうか?』と問われて、『韓民族は、時の指導者が正しく政をしているなら、従順に従います。しかし一度、嘘偽り、義に反することをしたとき、はっきりとノーというのです。ですから朴大統領は部下に撃たれたのです。ところが、日本人は人とつながっています。よくても悪くても、「私はこの先生の決定を認め、それに賛成します!」として、認めてしまうのです。』と、日本人と朝鮮民族の違いを話されたのです。そんな話を、情報の閉塞の中で思い出してしまいました。

  不正、義に反すること、嘘偽りは、人道上、それらが人の命に関わるなら赦すことはできません。大きな影響力を持つマスコミが、正しい発言を躊躇するなら、マスコミの存在の価値や意義を失してしまっていることになります。そうであるなら効き味を無くしてしまって、外に捨てられる「塩」に成り下がっているのです。こういった専門分野に素人の私は、《正確な情報》と、《理にかなった解説と判断》を聞きたいと切々と願っています。

  なぜなら、私は、人類の最高の規範、指南書に、これまで聴き続け教えられてきたからです。人を恐れないで、失うことを恐れないで提供される、右に行くか、左に行くか、前に進むか、後に退くべきか決めるための情報を得ただけです。この深刻な事態を改善し、終息させるための《天来の知恵》が、事に当たっている専門家のみなさんの上に下ることを願うのが、長くこの書を読んできての結論なのです。その神秘的な知恵が、この事態の改善のための秘訣だと信じてやまないのす。人類はいくたびも、そうやって油注がれ用いられた有名無名の《器(うつわ)》によって危機を回避してきているからです。そんな器の出現を願わされている、桜花が散ろうとしている、大震災からひと月の日の昼過ぎであります。

(写真は、福岡県宗像から望み見る「玄界灘」です)

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