タニシ

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子育てをした街に住んでいた時、「ツボ」と呼ばれる巻貝をもらった事がありました。「田螺(タニシ)」を、その地方では、そう呼んでいたのです。貴重なタンパク源で、味噌汁の具にすると美味なのだそうです。とても沢山いただいたのです。タニシは、稲の刈り株の下にいるのだそうです。そして、その町の北の方の村では、稲刈りの終えた田圃(たんぼ)で、このタニシを養殖して、出荷していたのです。

ところが、どの様に養殖してるのかと言うと、「人糞(じんぷん)」を餌にしているのです。昔は、トイレは水洗ではなく、それは農家の貴重な肥料であったので、自然農法には欠かせなかったとの事です。タニシも、それを餌にしてると聞いてからは、急に食べなくなってしまったのです。もらったのはよかったのですが、結局大家さんに上げたら、大喜びされてしまったわけです。

私たちは、食料が何を餌や肥料にして生育しているかを知ってしまうと、食べるのを躊躇してしまう事があるのです。牛や羊は、草食ですが、豚は雑食でなんでも食べてしまいます。でも、<トンカツ>も<カツ丼>も好物で、そんな事忘れて食べてしまうわけです。そんな事を意識しないでいる方が賢明かも知れません。

私たちの住む小区の入口には、一階を商店にして、様々なものを売っているのです。野菜や果物、そして魚介類や肉も置いてあります。一軒の店頭に、鯉、ドジョウ、そしてタニシが置いてあって、それを見て、タニシの経緯を思い出したわけです。東アジア人は、同じ物を食べて生きてきたんだと、再確認しているわけです。稲作と、そこに生息する淡水の小さな生き物類(ドジョウやフナや虫やカエルやトンボや蝶やウンカ等)のフンや死骸などが循環して、一つの生態系が、何千年もの間、維持され作り上げられ続けてきてるのですね。

先週、家内とその商店の並びの端にある食堂に行って、この地方独特の麺と肉を薄皮で包んだスープで昼食にしたのです。近所の建設現場で作業をされている方が、ひっきりなしにやって来る、大流行りの店です。それが美味しいのです。食事が終わって、そこにある店を、じっくり見て回ったのです。小葱、里芋、レンコン、カボチャ、干し魚、キンカン、りんご、そう全く日本の店と変わらない品揃えでした。

ご夫婦で店を切り盛りし、綺麗に品並べをしていて、正直そうな好い夫婦です。子どもの面倒をするお母さんも出て来て、そんな人たちと世間話をしてしまいました。家内を、『阿姨ayi/おばさん』と呼んでいて、お得意さんなのです。そう日が延びてきています。太陽もベランダを照らす時間が増えてきています。

夕方になると、決まって、事務所が選曲するのでしょう「ベッサメムーチョ」のCDが流れてきます。上の家からは、まな板を使う音が聞こえてきて、帰宅途中の靴音もしてきます。中国の市井(しせい)は長閑(のど)かです。

(冬の田圃です)
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