病み抜けた母

.
.

 「病み抜ける」、病気からの恢復を、そう言った言い方をするのだそうです。そう言えば、『風邪が抜けまして、元気になりました!』と言ったのを聞いたことがあります。長い間、婦人病で苦しんできた女性が、聖書に出てきます。次のように記されてあります。

『そこで、イエスは彼といっしょに出かけられたが、多くの群衆がイエスについて来て、イエスに押し迫った。ところで、十二年の間長血をわずらっている女がいた。この女は多くの医者からひどいめに会わされて、自分の持ち物をみな使い果たしてしまったが、何のかいもなく、かえって悪くなる一方であった。彼女は、イエスのことを耳にして、群衆の中に紛れ込み、うしろから、イエスの着物にさわった。「お着物にさわることでもできれば、きっと直る」と考えていたからである。すると、すぐに、血の源がかれて、ひどい痛みが直ったことを、からだに感じた。イエスも、すぐに、自分のうちから力が外に出て行ったことに気づいて、群衆の中を振り向いて、「だれがわたしの着物にさわったのですか」と言われた。そこで弟子たちはイエスに言った。「群衆があなたに押し迫っているのをご覧になっていて、それでも『だれがわたしにさわったのか』とおっしゃるのですか。」イエスは、それをした人を知ろうとして、見回しておられた。女は恐れおののき、自分の身に起こった事を知り、イエスの前に出てひれ伏し、イエスに真実を余すところなく打ち明けた。そこで、イエスは彼女にこう言われた。「娘よ。あなたの信仰があなたを直したのです。安心して帰りなさい。病気にかからず、すこやかでいなさい。」(新改訳聖書 マルコ5章24~34節)』

 まさに、「病み抜けた婦人」と言えるでしょうか。現代医学、薬学の時代は、不治の病だと言われてきたのに、優れた診察と治療と薬とによって、回復することができるようになってきました。ガンの告知は、死の宣告と同じであった時代、病んでいる人の家族には言っても、本人には隠していたものです。

 私の母が五十になって間もない頃に、入院したことがありました。病院から、『お話したいことがあるのでおいでください!』と連絡があった時、父は医者に会いたくなかったので、『準、お前が言って聞いてきてくれ!』と言って、武蔵境駅の近くにあった日赤病院に行き、母の主治医に、私が会いました。父は、何を言われるか分かっていたのでしょう、主治医は、父の代わりに来た私に、『君でもいいでしょう!』と躊躇しながら、手術で取り出した、母の卵巣を見せてくれたのです。それは、ガンに冒されていました。

 言いにくそうに、医師は、『お父さまに、お母さまはもう半年の余命ですと伝えてください!』と言われて家に帰りました。父は、『準、覚悟しような!』と言ったきりだったのです。会社を部下に任せて、弟と私に世話をしてくれていて、学校から帰ると、父が作った野菜スープを小さな薬罐のような入れ物に入れて、『お母さんのところに持っていってくれ!と、ちょくちょく言われて、バスで入院先の隣街の地方公務員共済病院に持っていきました。兄たちは、静岡と千葉でサラリーマン生活をしていました。

 母は、信仰者でしたから、自分の教会では、母のために祈ってくれていました。自分が重篤な病気だと、母には分かっていましたが、父も私も病名は言いませんでした。そんな母が、新約聖書のヨハネの黙示録のみことばを読んで、強い確信を得たのです。

.

.

『御使いはまた、私に水晶のように光るいのちの水の川を見せた。それは神と小羊との御座から出て、都の大通りの中央を流れていた。川の両岸には、いのちの木があって、十二種の実がなり、毎月、実ができた。また、その木の葉は諸国の民をいやした。(ヨハネの黙示録22章1~2節)』

 やがて天から降ると約束された新しい国の都・新エルサレムの大通りに植えられた「いのちの木」を見、その木になる「実」も見ますと、その木の葉が、諸国の民を癒すと書いてあるのを読んだのです。そして『神さまは、自分の病を癒してくださる!』と、母はかたく信じたものたのです。

 母は、それから、半年過ごしただけではなく、九五で帰天するまで、「すこやか」で過ごし、老衰のうちに平安をもって召されたのです。二度も三度も、「病み抜け」ることができました。山陰出雲で、カナダ人宣教師家族と出会い、彼らが伝えた、救い主イエスさまと出会って、信仰者として「生き抜いた」のです。永遠のいのちに蘇る日に、私は、父にも、この母にも、宣教師さんたちにも再会できると信じているのです。

『そこで、まず初めに、このことを勧めます。すべての人のために、また王とすべての高い地位にある人たちのために願い、祈り、とりなし、感謝がささげられるようにしなさい。それは、私たちが敬虔に、また、威厳をもって、平安で静かな一生を過ごすためです。」(1テモテ2章1-2節)』

 もう10月になりました。母の生まれた隣県の鳥取の出身の石破茂氏が、自民党総裁になり、総理大臣に就任します。お母さまもお爺さまもクリスチャンで、若い頃に、鳥取の教会で、バプテスマを受けておいでで、聖書を、よく読まれるとご自身言っておいでです。先週末、訪ねてくれた下の息子が、『(首相になる石破氏のために)祈ろうと思う!』と言っておりました。私も執り成し、感謝の祈りをさせていただこうと思っています。

(Christian clip arts から「長血の女の癒し」、今のエルサレムです)

.