『イエローストーンにしよう!』、『モンタナにも行きたい!』ということで、オレゴン州、ワシントン州、アイダホ州、モンタナ州、ワイオミング州のイエ ローストーン(国立公園)に、娘ふたりと一週間の旅行をしたことがありました。次女の卒業式に出席して、『折角のアメリカ訪問なのだから!』と彼女たちに 勧められたのです。どうしてモンタナだったのかといいますと、1990年代の初めの頃だったでしょうか、「リバー・ランズ・スルー・イット”A River Runs Through I”」を観て強い印象を受けていたのです。この映画の舞台だったのが、“Big Sky”と呼ばれるモンタナで、そのミズーラの川と空の美しさに魅入られ てしまっていたのです。もちろん開拓者の家族の物語にも、ジェームス・デーンの再来とも言われていた、ブラッド・ピッドも気になりましたが、第一は、その自然 美でした。モンタナこそ、北米の自然美の最たるものではないかと思った私は、『何時か訪ねてみたい!』と思っていたのです。
その旅は、とても楽しいものでした。ドライブインに泊まり、食事はスーパーマーケットで食材を買って、公園の施設で調理したりの一週間だったのです。警ら 中のパトカーに不審に思われて、職務質問にもあったりしましたが、事情が分ったのでしょうか、行ってしまいました。6月だったのに、雪が降った日もありま したが記念すべき時でもありました。このイエローストーンは、ユネスコの「世界遺産」の第一号だったのではないでしょうか。残念なこことに、訪問の1年ほ ど前に森林火災があって、焼け跡が目立っていましたが、野生のバッファローとか鹿や小リスなどもみることができ壮大な自然に圧倒されてしまいました今、生 活の本拠地である。
今、生活の本拠地である中国にも、多くの「世界遺産」が認定されているのですが、北京の故宮(紫禁城)や万里の長城、四川省の九寨溝や黄龍、福建省の土楼 を訪ねたことがあります。この自然美でしょうか、造物美はイエローストーンに勝るとも劣りませんし、文化遺産は、中国人の驚くべき知恵を感じさせられて圧 倒されてしまうほどでした。
しかし、一番美しく感嘆の的であるのは、「一人ひとりの故郷にある美」、「一人ひとりの思い出の中にある懐旧の美」なのではないでしょう。ワイオミングや 四川省に行かなくても、父や母や兄弟たちと過ごした片田舎に咲いていたタンポポや桑の実(ドドメ)、田舎道にあった水車や丸木橋、父が作ってくれたカルメ 焼きや正確に切り込んでくれた雑煮用の餅などには、実に懐かしい思い出が残されています。『日本って美しい国だ!』と真実思うのです。
これは感傷的である というよりは、こういった物事に敏感で鋭敏、繊細に反応する感覚を、民族として受け継いでいると思うのです。地震や津波は、あまりにも峻厳で厳粛であるこ とは事実ですが、豊かで美しい自然に恵まれた風土の中に生まれ、育ったからに違いないのではないでしょうか。南北に細長い島国で、四面が海で囲まれ暖流と 寒流が流れ、列島の中央には急峻な山並みが背骨のようにして走り、春夏秋冬の四季の移り変わりが生活そのものに大きく影響してきた、こういった驚くほどの 自然の恩恵に浴してきた民族なのではないでしょうか。この自然環境の中にやって来て住み始め、天来の知恵や、渡来して下さった民の技術や能力で、この文化 が育まれたのでしょうか。としますと、私たちは自然に創りだされた民族と言ったらいいのでしょうか。
すべての民族・国民には、それぞれに独特な優秀さがあるのですから、それを分かち合いながら、この地球を生活の場としているすべての人が、これに深く感謝 し、これに知恵を傾けて保全していきたいものです。太陽の熱量や光線、空気や水、さらに助け合い支えあうことなしには、どの民族も国家も存続していくこと ができません。小さな惑星の上に生活を営む私たちが、「恩恵のもとにある」という事実を、もう一度、認め直して、いがみ合いやそねみ合うことなしに、生き るように祝福され、定められている時間と地域の中で、責任を全うしていきたいものです。
明日は「節分」、そして明後日は「立春」になります。今、日本列島は、歴史的な豪雪に見舞われていますが、もう春の足音が聞こえています。来ない春はない、しばし忍んで、春を待つことにしたいものです。