♭ うみ ♯

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夏の季節がやってきますと、懐かしく思い出す歌があります。作詞が林柳波、作曲が井上武士で、文部省唱歌の「うみ」があります。

1 うみはひろいな 大きいな
月がのぼるし 日がしずむ

2 うみは大なみ あおいなみ
ゆれてどこまで つづくやら

3 うみにおふねを うかばして
いってみたいな よそのくに

山奥で生まれて、海を見ることなく育った私にとって、海への憧れは、人一倍大きかったようです。初めて海を見た記憶は、母のふるさとに旅行した時に、汽車の車窓からだったと思います。土佐の桂浜から太平洋の大海原を眺めた坂本龍馬のような思いには至らなかったのですが、海の向こうの世界には、何か夢があり、その夢を果たせそうなものを感じたのは確かです。

父は神奈川県横須賀の出身で、曽祖父は「海軍工廠」の技官だったそうで、海とは近い関係があったようです。父の中学時代に、横須賀から東京湾を横断する遠泳に出たとか聞いたことがありました。当時の海は綺麗だったのでしょう。中学に入った時に、横須賀からは対岸の館山海岸で、「水泳教室」が持たれ、参加しました。赤い六尺褌をキリリと締めて、<男>になったように感じたのです。海の水の塩っぱさが、あれほどとは思いませんでした。

海を眺めたり、潮騒(しおさい)を聞いたり、泳いだりしますと、<古里回帰>のように感じるのは、父の血の故でしょうか。よく聞いたのは、潮の満ち引きの音は、母の胎内の羊水の中にいた時の記憶に通じるのだそうです。だから、潮騒を耳にすると、何とも言えないほどに、心が落ち着くのかも知れません。このところ、上海と大阪の航路を行き来する「蘇州號」に乗っていません。東シナ海の夏の潮風は、頬にとても気持ち好いのです。また乗船してみたいものです。

(写真は、三島由紀夫の「潮騒」の舞台である鳥羽・沖島です)

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