人の優しい気持ち

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山西刀削面

 こちらに生活をしていますと、見ず知らずの外国人の私たちに、多くの人たちが親切に接してくれるのです。例えば、階段や道で会いますと、『吃飯了没有?』と話しかけてくれます。これは、『飯を食ったか?』という意味で、実際に、ご飯の心配をしてくれていると言うよりは、日常の挨拶言葉で、日本人の私たちが、日常的に使っている『こんちは!』なのです。それでも、『食べてない!』と答えたら、『食べてかないか!』と声をかけてくれそうな感じがしてしまいます。時々、『お節介!』と思うこともありますが、お互いの距離がとても近いのです。この社会は、そうやって助け合って生きてきた伝統があるのだろうと思うのです。

 「新華網」、2013年1月27日の記事に、この様な記事が掲載されていました。河南省鄭州市で、癌にかかってしまった「刀削面店(ラーメン)」の主人が、『ラーメンを食べに来てほしい!』と呼びかけた所、多くの人が、このラーメン店に食べに来ているのだそうです。

 このラーメン店の主人の李剛(リー・ガン42歳)は、数日前、ネット上で、『私は悪性腫瘍である骨肉腫にかかっていることが分かったのですが、手術代が用意で きないのです。妻が店を切り盛りしているので是非食べに来てほしい!』と書き込んだのです。その実直なものいいが、人々の心に届いて、この記事が拡散していったようです。とくに若い人たちが、わざわざ食べに来ているのです。

 そのお店は、郊外の目立たないところにあり、しかも4人が腰掛けるテーブルが8つしかない小さな店なのだそうです。ネット上で話題になっていることから、連日多数の客がつめかけています。『手術代の足しに!』と100元を、奥さんに渡したりしているそうです。また、『おつりはいりません!』と言って帰る客がいたり、あるお客は、店のお手伝いまでしているのです。人々気持ちがやさしいのでしょう。

 「美談」ではないでしょうか。ベタベタした人間関係はみられないのですが、いつも誰かの心配や気遣いをしながら、みなさんが生きているのです。とくに、この「華南の地」の庶民の人情は、こういった傾向が見られるようです。気取っている日本の隣近所とは違うのです。しかし、以前の日本の近所付き合いは、この町と似ていたと思います。門構えなどなかった家に住んでいた、ごく普通の父の家では、『おい、雅、これ隣りに持っていけ!』と言って、父が持ち帰ったお土産を、「おすそ分け」したのです。「語源由来辞典」によりますと、『もらった品物や利益を他の人に分け与えること。お福分け。御裾分け。』とあります。

 『月末に上海に行きます!』といったら、上海に、ご両親のおられる一人の学生さんが、『友だちと一緒に、虹橋駅で先生を出迎えますので!』と言ってくれました。アジア最大の都市・上海に行くのに、これまでは長距離バスを利用していましたが、「危険」と『到着時間にやきもきする!』という理由で、今回は、「動車(中国版の新幹線)」に乗ることにしたのです。道不案内の私への優しい気持ちなのです。そう言ってくださったので、『じゃあ、よろしくお願いします!』と返事をしました。ちょっと楽しみな月末です。

(写真は、山西省で有名な麺類、「刀削面」です)

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