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 結婚したての若かりし頃、「奥さんは、〈首〉なのです。その上に載っている〈頭〉を、その〈首〉が自在に動かしているからです!」という話を、何かの講演会の例話で聞きました。当時は、その意味がまったく分かりませんでした。しかし、やがて結婚生活を重ねて、子どもたちが次々に与えられていく中で、どんなに威張って「俺が・・・!」と意気込んで、主導権を発揮し、亭主関白宣言でやっていこうと思っていたのですが、だめでした。カラ元気ばかりで、実際は弱気だった明治男の父同様、やはり家の中では、女性のほうが上であり、まさに〈首〉であるという現実に直面せざるを得なかったのです。

 ご老人のいる家を訪ねて、いつも感じたことは、好き勝手に生きてきた老主人は、すっかり弱くなってしまい、背中を丸めて隅にいるのですが、家の真ん中で高笑いをして指揮棒を振っているのは老夫人なのです。若いうちは、手綱を手にしながら好きに走らせ、泳がせていましたが、重大事の決定は御台所によるというのが、パターンでしょうか。そうでなければ、お爺さんは、すでに亡くなってしまい、おばあさんはてかてかした脂顔で、家の中のすべてを牛耳っているという型でしょうか。とにかくご婦人のほうが強いのは、日本が、ずっと〈母系社会〉だったことを証ししております。

 最近、現首相の夫人の事を伝え聞くことが何度かありました。経済産業相が、手のひらに「忍」という字を書いて、予算委員会に臨んだのだそうです。このことが閣僚内で話題とされたとき、首相が、「彼は疲れがたまっていたのだろうが、思うところはある。俺だってこらえているんだ。首相執務室に以前から〈忍〉の字を飾っている」と打ち明けたのだそうです。この話に、首相夫人が割り込んできて、即時退陣を迫られた経済産業相が、涙ぐんでしまったことを取り上げて、「泣くような人に大臣は務まらない。私だったら、そんな人はさっさと別れるわ!」と。その人の妻でもないのに豪語したのだそうです。ツマらないことを言ったものです。さらに主人に向かっても、「あなたが泣いたら別かれるわよ!」とダメを押した、いえ脅したのだそうです。

 このことを聞いたときに、現首相の〈弱腰〉、〈煮え切らなさ〉、〈優柔不断さ〉の原因が分かったような気がしました。家にいて、子どもたちが巣立って独立しまった今、二人で話しをしている時、主導権はご婦人が握っていて、あれやこれやと指示を下すのでしょうか。それをメモった首相が、国民とマスコミと閣僚の前で、夫人の考えを自分の意見として述べてきたのだということがでしょうか。そんな想像をかたくしてしまうのですが、真偽の程は。これでは、一国の命運を握って、決断をくださなければならない指導者は、決して務まりませんね。

 「今になって、どうして?」と言われますが、全学連の革マル派にだって親交があり、過激な反政府活動をしてきた人、当時の警察庁にマークされていた人物、日本人が憎んだ拉致犯に関係する政党に献金をして支持するような男、暴力革命を願う思想家に、この掛け替えのない国の舵取りなどさせておけないとかねがね思ってきました。もちろん女性の知恵深い助言は、男を助けますが、助言者の域を超えて、頭になってしまうなら、一国は滅びてしまいます。そんな歴史の顛末を、幾度と無なく聞かされてきていますので、とても心配してきました。「私よりも◯子のほうが能力が高い!」と奥様を褒めるのはいいのですが、その能力に頼っての決定で国が動くとしたら、危険千万なことに違いありません。我が国が、何ともちぐはぐな状態で、軋む音が聞こえている、1つの大きな原因は、ここにあったのではないでしょうか。それが終わろうとしているので、ひと安心しております。はい。

(写真は、菅大臣神社〈菅原道真の「菅」です〉での現首相の姿です)

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