「syndrome/シンドローム」と言う言葉があります。日本語には、「症候群」と訳されていて、ずいぶん前から、少々、流行語にように、今起きている心理的な、また病的な傾向を言い表すのに、よく使われてきています。
子育てを終えて、巣立っていく子どもたちを送り出してしまって、急に家の中が隙間だらけになって、残された家が、「空の巣」になってしまって、その現実についていけない両親に見られる、不安な心理状態を、「空の巣症候群」と言うようです。
面白いのは、「ピーターパン症候群」があります。アメリカの心理学者のダン・カイリーが、そう言い始めて、1983年に、その題の本を表しました。ピーターパンは、人として、未成熟さを持っていて、大人になりきれないのです。子どものままに、自己中心的で、責任をとらない、反抗的、怒りやすいと言った特徴を持っています。社会的に未成熟で、社会の一員として生きれないのです。そんな人をそう言ったのです。男性だけに見られると言われ、それに対して女性は、「シンデレラ」を登場させています。
最近、「ストックホルム症候群(Stockholm Syndrome)」と言う心理的な症状を言うことがあるようです。犯罪や虐待にあった被害者のみなさんが、危害を加えてた相手に対して、憎んだり恨んだりするのが普通でした。ところが反感ではなく、強い「親近感」を感じてしまう人たちがいることを指摘しています。
誘拐事件にあったり、DVの被害を受けた人が、その加害者に対して、一緒に時を過ごしている間に、憎しみとは反対の感情が生まれてくることがあるのだそうです。人間の心理とは不思議なものなのです。まったく反対の感情が、心の中に湧き上がってくるのです。
もう50年も前、1970年(昭和45年)3月31日に、飛行機をハイジャックした事件がありました。羽田空港から福岡の板付空港に向かった、日航機の「ヨド号ハイジャック事件」と呼ばれています。犯人は、学生たちで、赤軍派と呼ばれた9人でした。大事件として新聞やテレビの報道を賑やかせたので、よく覚えています。
日本の公安警察が、航空機を北朝鮮ではなく、韓国のソウルの飛行場に着陸させて、北朝鮮だと言って騙そうとしたのですが、犯人に、北朝鮮では内地見破られた一幕があったりで、うまくいきませんでした。けっきょく、山村政務次官が、人質となっていた乗客122人の解放のために、ソウルの金浦空港で解放のために交渉し、自ら人質になって、ピョンヤン空港に連れて行かれ、一躍人気を博したのです。
ところが乗客たちに中に、この「ストックホルム症候群」を見せた人たちがいたのです。1970年代に、スウェーデンの首都ストックホルムで、銀行強盗事件が起きた時、犯人たちが人質をとって、銀行内に立て籠ったのです。人質は、犯人の許可がないと、何の行動も取れない状況の中で、犯人は食事を配ってくれたりする間に、好意を感じたり親近感を感じたり、同情したりしたりするようになったのです。その心理状況を、そう言っています。
もしかすると、生き延びるために、犯人に協力した人たちもいたようで、ストックホルムの強盗事件では、人質の中には銃をとって加担した人もいたようです。人は、状況によっては、不思議な感情や心理に陥り、不可解な行動に出るのでしょうか。
犯罪者を犯罪者として見るのではなくなると言ったことが起こりうるのでしょう。人とは摩訶不思議な行動や心理を見せるものなのでしょうか。恐怖心と緊張の中で、通常では考えられない、信じられない行動を取ったり、心理状況に陥るのでしょう。人の心は、水のように低い所に流れていく傾向にありそうです。危険回避のためにでしょうか。
(ウイキペディアの「ストックホルム中央駅」、「湯西川」の流れです)
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