助言者

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 富士山の山梨側、富士五湖に、上九一色村(現在は河口湖町です)がありました。富士の裾野で、牧場などが点在する地で、車で走ると、爽快な気分が楽しめます。富士宮や沼津や伊豆に用があって出掛ける時、そこを通ることがありました。

 そこに、極めて悪質な事件を起こした宗教団体の大きな施設が建設されていました。猛毒のサリンなどを生産し、教えに従う者に訓練する「オウム」の主要な施設でした。今では、更地になっていて、おぞましい事件の拠点であったことは知る由もありません。

 1995年3月20日に、長女の卒業式が、渋谷区の公会堂で行われるというので、アルバイトしながら学んだ彼女の頑張りを褒めたくて、家内と二人で出掛けたのです。その朝に起こっていたのが、「地下鉄サリン事件」でした。『まさか!』のニュース報道で知ったのは、式の終わった後でした。

 私たちは新宿まわりで、JR山手線の渋谷駅から行きましたが、長女は友人の家からでしょうか、地下鉄で来ていました。事件が起きたのが、午前8時頃でしたから、一歩、一時間違えたら、事件に巻き込まれたかも知れないような状況だったのです。死者14人、負傷者6300人の大惨事でした。

 それ以前に、不穏な事件を犯し続けて、社会を騒然とさせてきた宗教団体の人の道を大きく外れた事件が起こっていました。オウムを糾弾した弁護士夫妻とお子さんは、この事件の首謀者たちの裁判が結審し、刑が決定し、首謀者は処刑されていますが、未だに行くへ不明のままです。

 この事件に、直接関わって大罪を犯した者たちが、科学的な思考のできる高学歴な者たちが多くいて、そういった背景の人の心を、思いのままに繰る宗教の力の大きさに、私たちは唖然とされたのです。まさに、ドイツのナチスに首謀者に似た闇の力を借りた力を働かせたのです。まさに「マインド・コントロール」の事実です。

 それは「カルト事件」であって、宗教は、こう言った逸脱・病理的な犯罪行動を犯してしまうのだということが、明らかにされたのです。教祖のことば、教えが持つ力の影響力は実に大きく、心を縛り付けて、その教えから離れたら不安と恐れで立ちいかず、そこに留まり続けるのです。

 何かに縋(すが)って人は生きるのですが、縋る相手を間違えると、自分を滅ぼすだけでなく、社会を破滅させる危険性が潜んでいます。熱狂と、扇動と、悪魔的な力は、私たちの周りに、いつでもありうるのです。

 〈窮鼠猫を噛む〉、官憲の力で追い込む以外にないのでしょうか。退路を塞がれてしまい、自暴自棄になって、悪事の上に悪事を重ねて、自分でも信じられないほどのことを起こしてしまいます。多くの追随者を生み出し、首謀者に心酔させ、陶酔せてしまうのに、誰もが驚かされたのです。

 思想でも哲学でも宗教でも、「極端」な主張、急激な変化を期待するものは避けなければなりません。それらに惑わされないために、《真理への愛》を持ち続けるなら、偽善や不法を看破することができます。そして、だれでも《善き助言者》を持つことなのです。

(旧上九一色村の村花「フジアザミ」です)

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