.
.
今も、ベランダで、秋風が晩期の朝顔の葉を揺らすのが見えます。風を感じるたび思い起こす諺や言い回しが、いくつもあります。『風を起こす(新しいことを始める事、新風を起こす事など)』、『風を集める(人の協力を得て一つになる事)』、『風に逆らう(時代の風調に逆らって生きたり存在したりする事)』、『風に靡(なび)く(みんなに同調する事、附和雷同)』、『風に任せる(時流に乗ってしまう事、その時代の傾向に沿って生きること)』などと言います。
これは、自然界に吹く「風」ではありません。世の中には、頬を撫ぜたり、髪をたなびかせたり、葉を揺らせたりしない、目に見えない風ですか、意識上に感じられる「風」が吹いている様です。どんな「風」が吹いているのか調べてみました。
風雪⇨父は風雪五十年の苦労人です(風や雪に耐えて生きた事)、
風化⇨もう風化してしまった、
風雅⇨あの方は風雅(ふうが)な人だ、
風格⇨社長は風格のある立派な人です、
風雲⇨何か風雲急を告げる様だ、
風雲児⇨彼の事を時代の風雲児と言っている、
風紀⇨最近、学校の風紀が乱れています、
風采⇨おれは風采が上がらない男だ、
風習⇨それはここの風習なのです、
風俗⇨ここは田舎とは風俗が違います、
風潮⇨最近の風調なのでしょうか、
風調⇨宋詩の風調が染みており、
風体⇨怪しい風体(ふうてい)をした人、
風土⇨中国の風土に似合った文化がたくさんあります、
風物⇨ここの風物なのです、
風物詩⇨この地域の風物詩です、
風貌⇨独特な風貌(ふうぼう)をした人です、
風味⇨豊かな風味を持つ和菓子です、
風流⇨祖父は風流な人だった(風流人)、
風穴⇨あの方が時代に風穴(かざあな)を開けた人です、
風情⇨秋の風情(ふぜい)が感じられます、
風評⇨最近は風評被害が多い様です、
風塵⇨風塵(ふうじん)に帰す、
気風⇨彼は自分と気風の合った人です、
今風⇨今風に言うと(昔風)、
俺風⇨俺風に言わせてもらうと、
日本風⇨これって日本風なんです、
家風⇨嫁は家風に合っています、
画風⇨これは狩野派の画風です、
学風⇨学風を感じさせる作品です、
社風⇨これは我が社の社風です、
悪風⇨どうも最近は悪風が立っている様です、
古風⇨この趣味って古風です、
新風⇨彼がきて新風が吹き込まれた様です、
作風⇨この絵は独特な作風です、
威風⇨威風堂々とした人です、
順風⇨順風満帆な人生を送っている、
旋風⇨彼の作品は旋風(せんぷう)を起こした、
逆風⇨このところ逆風が吹き始めている、
美風⇨こういった習慣は美風なのでしょう、
手風(てぶり)=風習、習俗の事、
日本や中国のみなさんも、いえ欧米や東南アジア、アフリカや南北アメリカ大陸やオーストラリヤ、島々の国も、みんな様々な風に、身を任せたり、逆らったりしながら、人は、そこで生きて来たのでしょうね。その時代や起こった事件、出来事などと共に、強く弱く吹いてきて、身の回りに「風」を起こして、そして通り抜けて行ったわけです。その繰り返しに吹いては去って行った「風の集積」が、人を鍛え、形造ってきたのでしょうか。もう「一風」、「新風」を吹かせて、風車(かざぐるま)に乗ってみたいものです。
オレゴン、カリフォルニア、ワシントンに三州が、山火事が起こって、強風と雨の降らない天候で、大変な被害を巻き起こしています。今朝の娘からのメールによりますと、風向きが変わって、週初めには雨が降るとの予報が出ているそうです。「掌(たなごころ)に風を集めるお方」は、ちょうどよく風の向きも変えられるのでしょう。
.