入院

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今年の二月に、栃木の友人の家にお邪魔していて、帰る前の晩、階段を降りてて踏み外して、転げ落ちて、したたか左の肩を床に打ち付けてしまいました。翌朝、その友人に成田までのリムジンバスの発着所に送ってもらい、中国の街に、痛いまま戻ったのです。でも日が経つに従って、肩の痛みが増していきました。それで、市内の病院で、"CT"を撮影してもらいましたが、骨折ではないとの事でした。

それでも痛みは増すばかりでした。それで肩の打撲について、ネットで検索していたら、「腱板断裂」かも知れないと思い、探し当てた札幌の病院に、メールで、症状を伝えたところ、主治医から、『"MRI"を撮って送ってください!』とのことでした。それで、その病院で撮影していただき、メールに添付して送信したのです。そのフィルムを見た医者は、『腱板断裂ですから、早めにどこかの整形外科で手術が必要です!』と返信があったのです。

それで、そこまで親切にしてくださったので、中国から見た日本の街は、どこの街も同じ位置でしたから、難なく、"ネット環境"で診断を下し、返信してくれた医者に診察と手術をお任せしようと決めたのです。それで、4月12日に、"北帰行(!?)"をし、北海道札幌に参りました。

ある新聞記事に、「北げる」という言葉が出ていました。五味康祐が、そういった表現をしたそうで、「逃げる」を、そう表記しているのです。『通常、人は南から北に逃げるのだ!』そうで、だから「北げる」で好いのだそうです。

「北」は、「敗北」の「北」。「北」という漢字のルーツ(字源)は、背を向けてはなれる、すなわち、負けて「逃げる」ということのようです。
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.後漢時代、紀元100年ころつくられた中国最古の体系的字書『説文解字(せつもんかいじ)』には、「乖(そむ)くなり。二人相背(あいそむ)くに从(したが)う」と書いてある。・・・じつはこれ、二人の人が背中を向け合って立っているところを描いた文字なのだ。背を向けて乖離(かいり)する(はなれる)——これは「逃げる」ということにほかならない。つまり「敗北」とは、(戦いに)敗れて逃げるということなのだ。(「不思議な漢字―意外と知らない日本語の謎(志田唯史・文春文庫+PLUS)」)
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「北」の漢字の成り立ち・由来
会意文字です。2人の人が背を向けて「そむく・にげる」を意味します。
また、人は明るい南面を好むが、そのとき背にする方角「きた」を意味する「北」という漢字が成り立ちました。(「漢字の成り立ち・由来辞典」より)

私は、決して、「北げる(逃げる)」ために札幌に行ったのではなく、そこは親切さにほだされ、その病院に入院して分かった事ですが、同じように「腱板断裂」で手術をしてもらった患者が、常時3、40名も入院していたので、執刀医で院長の医師の腕が優れており、看護もリハビリテーションも素晴らしかったからです。《中国から来た日本人の患者》である私に、病院規定の例外で、本院にい続けさせてくれて(本来なら分院に転院させられるのですが)、リハビリに専念させていただいたのです。

4月12日初診、14日手術、5月19日退院、<35日間>の入院生活を過ごしたのです。こちらに戻ってから、友人たちが探してくれた「市立医院」のリハビリテーション科でリハビリを受けました。今日、12月20日、術後8ヶ月が過ぎ、ほとんど支障なく左腕を使える様に快復しております。北国の秋を感じさせる8月には、《3ヶ月検診》に、家内を伴って、札幌、そして知人のいる函館に行って参りました。

入院中の病友が、どれほどいたでしょうか。「相憐れむ」病人同士、励まし合いながら、過ごした日々が懐かしく思い出されます。『ニセコに住んだらいい。親戚に土地を分けてもらうように言うから来てください!』と勧めてくれた方、カップラーメンの夜食を分けてくれた方、饅頭や北海道銘菓、手作りの菓子、飲み物を下さった方々、本を見せてくれた方、病室のトラブルを抱えて苦しんでいた方、手術をした後にリハビリのミスで出戻った方、"オホーツク文化"があった事を分かち合ってくれた方、みんなとよく話し合ったのです。そんな病友たちがいました。

毎朝、コーヒールームにいる私に『おはようございます!』と挨拶して北海道新聞、日経新聞を手渡してくださった警備員の方、『何でも言ってください!』、『男同志、体を洗いますので!』と言ってくれた男性看護師、美味しい処を教えてくれた看護師、育った家庭環境を話してくれた看護師、etcでした。

『北は<敗北>の北!』では、決してない事を知ったのです。今年、北海道フアンになり、北海道人が好きになりました。若かりし頃の"同級生+女友達"の出身地だったのも思い出させられたりでした。『伊達市は、住み良いですよ!』と移住の勧めをしてくれた病友もいました。ある方には、自分の人生の転機を話したりした事もありました。みなさんが無事に、新しい年を迎えられます様に願いつつ。

(今年"35日間"入院していた病室です)
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