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番町、麹町、田園調布といえば、東京の高級住宅地です。いわゆるお屋敷町で、そうそうたる方々の住宅地のようです。アメリカには、〈ビバリー・ヒルズ〉という街が、ロスアンゼルス近郊にありますが、ここも世界的に有名な高級住宅地です。その名にちなんで、〈〇〇リーヒルズ〉とあだ名される街が、日本にはあります。
先日、引っ越してきた地域を知ろうと思いまして、自転車でキョロキョロしながら散策に出ました。5年ほど前になりますが、この街に来ましてから間もなく、川沿いにある公園を案内していただきました。まだ、ほとんど整備されていなかったのですが、今は見違えるほどに綺麗になって、経済力の豊かさを象徴するような街並みが出来ていました。その案内していただいた時に、この町の歴史が石版に記されて、延々と川沿いの石壁に掲げられてありました。裁判所もでき、高層住宅群が道路際に林立しているのです。そこから自転車で5分ほどのところに、私たちは引っ越しをしたのです。近代都市に変貌した地域の道路沿いを走っていたとき、鬱蒼とした林の中に、いわゆる麹町や田園調布の界隈にみられうような二階建ての高級住宅群が広がっていました。塀に囲まれて警備が厳重になされている地域ですから、中に這入ってみることはかなわず、通りからフェンス越しに眺めてきました。『どんな階層の人が住んでいるんだろう?』と思いましたが、私には関係の無いことのようです。
日本の豊かさに大いに刺激され、中国の「改革開放政策」を推し進めた鄧小平氏が、こんなことを言っておられました。『先に豊になれるものから豊かになれ・・・落伍したものを助けよ!』とです。これは〈先富論〉と言われ、まさに、今の中国をみますと、彼の提言通りに変化したことになります。街中を公共バスに乗ったり、自転車で疾走していて眼に入るのは、ベンツ、BMW、アウディなどのヨーロッパ車に混じって、トヨタのセルシオです。引越し先に駐停車されている車を見ましても、三菱やスズキや日産などの日本車が実に多くなってきているのです。以前は高級車感覚の黒塗りが日本でも多かったのですが、今の中国も黒塗りの車が疾走しております。何よりも、この5年の間に、道路は車で溢れてラッシュは、東京なみではないでしょうか。おかげで、公共バスが遅れてしまうのが大きな問題になっているのです。「教師の日」にも、食事に招待されて、繁華街に参りましたが、1時間も前に家を出てバスを乗り継いだのですが、約束の時間に20分も遅れてしまったのです。時間厳守をモットーとする私としては、まず珍しい遅刻になってしまったのです。不断車を運転することがありませんので、道路事情を把握していなかったのです。ただただ平謝りをしてしまいました。
そんなことで、時々、『車がほしい!』と思ってしまうのです。日本では、何十年も車なしの生活など考えられなかったからですが、買い物に出たときに、自転車に買い物袋を下げて走るのは、ちょっと大変なときがあって、つい弱音を吐いてしまうのです。時々車に乗せてもらうのですが、その便利さに、『免許証をとろうかな!』との思いが湧き上がってまいります。『いやー、ここでは運転はしないほうがいいですよ!』と相談しましたら、7年も中国生活をされておられる知人から、そう言われましたから、諦めてはいるのですが、それでも雨の日は・・・。
まあ自転車は、まわりの相手に注意しながら走るなら、まあまあ安全だと思います。また運動不足の解消のためにもいいなと思っております。先日は、勤め先まで実験的に自転車で行ってみました。夏場は大汗をかいて授業をしたくないので、涼しくなったら自転車通勤をしようと決心していますので、その下見でした。川巾の広い箇所を通るのですが、橋詰には、自動車とは別に、螺旋式の自転車専用の道路を利用して、交差する道路に入るのですが、意外と厳しい物がありました。ここだろうと思っていましたら、学校の北門に出たので、キャンパス内を入って西門から出て、同じ道を帰ってきました。喉元過ぎればで、7年前に自転車で転倒して右腕の肩の腱板を切断する大怪我をして、ひと月も入院し、半年もリハビリをしたのに、もう今では颯爽と風を切っています。呼吸が荒くなることがありますが、これが新陳代謝にはいいので、今は、自転車乗りが、私の健康管理法になっております。
煉瓦の壁で囲まれた古い今までの赤レンガの住宅地が撤去されて、大きな商業施設や高層住宅に、中国中の街が変貌しています。路地裏が網の目のように入り組んだ中国らしさは、今では不便なのかも知れませんが、古いものが消えて行くのは、日本でも韓国でも、私の住んでいる街でも同じです。十年ほど前に、四川省に行きましたときに案内してくださった方が、『古い伝統的なものが消えていくのは至極残念です!』と嘆いていたのを思い出します。日本も同じですね、東京オリンピック以降、古いものが消え始めていきました。経済が豊かになるのに比例して、街が変わって、温かさをなくしていくのは世の常なのでしょうか。豊かさの代償と言えるでしょうか、ホンコンやシンガポールのような街並みになってしまっているのを、外国人としてちょっと寂しい思いをしている、まだまだ日中は暑い華南の街であります。
(写真は、中国の発展の象徴的な街、「深圳(Shen zhen)」です)