古のことと今

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 『あなたの指のわざである天を見、あなたが整えられた月や星を見ますのに、人とは、何者なのでしょう。あなたがこれを心に留められるとは。人の子とは、何者なのでしょう。あなたがこれを顧みられるとは。 あなたは、人を、神よりいくらか劣るものとし、これに栄光と誉れの冠をかぶらせました。 あなたの御手の多くのわざを人に治めさせ、万物を彼の足の下に置かれました。 すべて、羊も牛も、また、野の獣も、空の鳥、海の魚、海路を通うものも。私たちの主、主よ。あなたの御名は全地にわたり、なんと力強いことでしょう。(詩篇839節)』

 紀元前1000年に生まれて、七十数年の生涯を生きたイスラエルの王・ダビデの詠んだ「詩篇」が聖書の中にあります。その詩の中に詠まれてある、紀元前の人の信仰、思考、洞察、自戒、信頼、価値観、死生観、人間理解、希望などに、驚きを禁じ得ないのです。まるで、現代人の思いと寸分違わないからです。

 日本の皇祖と言われる神武天皇は、紀元前660年に、天皇に即位されたと、「日本書紀」の記述にあります。明治になって、そう公表されました。「日本書紀」は、紀元720年に完成された、日本の歴史書です。日本の歴史は、文字が、渡来人によってもたらされるまでは、口承で、人から人に語り伝えられたもので、文字の記録はないのです。

 漢字は、儒教の教本の「四書五経(論語などです)」や仏教の経典によって、およそ6世紀ころにもたらされているようです。その文字を用いて、日本書紀や古事記が記されてきています。ところが、ダビデの詩は、口承によったのではなく、3000年の前に、文字によって記され、残され、伝えられ、「聖書」の中に収められているのです。今日の感覚と同じで、人の心の動きの微細が記されています。

 ダビデ以前の「ノア」の時代のことが、聖書の「創世記」に中にあります。これはモーセによって記されたとされています。聖書(この場合「旧約聖書」に限りますが)は、紀元前4世紀頃に編集されたとされています。その書き初めに、Γγένεσις(ゲネシス、起源、誕生、創生、原因、開始、始まり、根源のことです)」と言われる書を、日本語では「創世記」と訳したものがあるのです。

 弥生時代人や縄文時代人の生活振りを、貝塚や古墳窓の戸籍から出土した物で理解し、朝鮮半島や中国の文献で知ることができるのですが、古代の彼らに、深い思考とか理想とか夢がなかったとは言えません。人を憎んだり愛したり、裁いたり赦したり、子や孫たちに託す夢だってあった日があったのに、それを知る術がありません。高松塚の壁画が発見され、注目されて50年も経つのですが、推定の段階でしかありません。

 壁の絵だけでなく土器の壊れた破片や折れた矢の鏃のように、何も語らない無言のままに、後世に人々の憶測や、推論で歴史の考察がなされてきたことになります。私たちの租となる人々に、物の生活だけではなく、深刻な思考の生活があったに違いないのは残念なことです。

 ダビデの詩には、「主」と訳された Yahweh (ヤーヴェ)"、”Jehovah (エホバ)" と呼びかけている神がいます。その主なる神なしには、この人の生涯を語ることができません。親兄弟には過小評価され、取るに足りない者でしたが、神は、このダビデを用いて、敵であったペリシテを敗走させる武勲をあげさせ、やがて、イスラエルの王に任職されるのです。人としてダビデの家系から、神の御子イエスが、人の子となられて誕生し、十字架で、人の救いのみ業を成就したのです。

 ダビデが信じ、仕えたように、異邦人であり、異教徒である私でさえも、この十字架の贖罪を信じるなら、救いに預かれるのです。人の世界は、アダムの罪以来、紛争と憎悪の繰り返しで、21世紀になった今に至っても、それらは止みません。何か第三次世界大戦の足音が聞こえている昨今です。聖書は、この人の営みや歴史に終わりがあると記しています。

 その時を迎える準備はお済みでしょうか。聖書には、『先生。それでは、これらのことは、いつ起こるのでしょう。』と言う問いに、『それから、イエスは彼らに言われた。「民族は民族に、国は国に敵対して立ち上がり、大地震があり、方々に疫病やききんが起こり、恐ろしいことや天からのすさまじい前兆が現れます。(ルカ211011節)』と答えたとあります。

 ここに、2000年の前になされた、わたしたちへの警告があります。そのための準備する時間的な猶予がありそうです。どうも、そんな時期が迫っているに違いありません。事が起こると、次から次へと急激に起こりそうです。

(古墳の壁画です)

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