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この街の目抜き通りに、二軒の書店があります。本を読まなくなったり、通販や電子書籍の攻勢に押されながらも、店を守り続けておいでです。私が時々、書棚から本を見つけたり、注文して購入するのですが、それは私の意思に従って買うわけです。ところが早く読みたいと思うと、ネット販売での注文が便利なわけです。もう翌日には配達されるし、送料もかからないのです。
ところがネットで購入しますと、趣味や趣向や傾向を、コンピューターが解析して、その本に関連する書名をメールで勧誘してくるのです。楽天にしろAmazonにしろ、『こんな本はいかがですか!』と、読書傾向を掴んでしまって、上手に売ろうとしているのです。
そうしますと、思想傾向も、経済状況も、趣味でさえも掌握していて、心の中を見透かされている様な感覚になって、ちょっと怖くなってしまったのです。たくさんのことを学んでいた若い頃、恩師は、〈世界政府の台頭〉について話してくれたことがありました。
ヨーロッパのある都市で、世界中からデータを集めて、この政府の樹立を準備しようとしていると言うことでした。世界中の何十億という人の個人データーが集積されていて、家系、学歴、職歴、収入、家族構成、収入、信仰、趣味、社会活動、行動軌跡などを、個人個人として書き込み、掌握しつつあることを言っていました。
SFの世界のことではなく、現実にそれがなされつつあるというわけです。私たちの国でも、2012年だったでしょうか「住民基本台帳」を作って、行政の利便性をはかろうとしたのです。この動きがあった時、恩師の教えを思い出して、襟を正したのです。それでも国の思惑とは違って、個人情報を知られたくない思いがあって、登録者数は低迷しているのが現状だそうです。
先日、母校にメールをしました。中学の同級生から空気銃を借りたまま返さず、しかも引っ越しのたびに、どこかに行ってしまっていたのです。その弁償をしようと、彼の消息を問い合わせたのです。ところが卒業後の動静が分からないとの返事でした。その卒業者名簿も、売り買いされるとのことで、どの学校も発行をやめてしまっているそうです。
防犯の範囲に留まらず、情報の悪用、取り締まり、強権の発動などに行くなら、実に怖いものになりそうです。誰でも、心の中や過去を覗かれたくないわけです。でも、企業や国が、『あなたは、こんな目的のために物を買っているのですね!』、『あなたの知人に、◯◯さんがいますね!』と、突然言われそうな時代が来ていて、何か脅かされつつある不安を覚えてしまいます。
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