アカチン

 

 

私たちの世代の《家庭常備薬》は、「アカチン」と「正露丸(戦前〈征露丸〉と表記されていました)」だったでしょうか。御多分に洩れず、父の家にも、この2つがありました。しかし、いつの間にか消えてしまい、所帯を持ってから、私の家の薬箱には、この2つは見当たりませんでした。なぜかと言いますと、アカチンは〈水銀〉、正露丸は〈防腐剤〉が原料だったことを分かってからです。

怪我の多かった私は、家に帰ると傷口を、母が水で洗って、この赤チンを塗って、消毒してくれました。そう言えば「オキシフル」という泡立つ消毒薬も、その薬箱にあって、これを先に傷口に塗ってくれたのです。わが手をジッと眺めると、その頃の無数の傷跡が残っているを数えることができるのです。

私たちの事務所を手作りで立ていた時に、基礎の上の木材の部分に、この防腐剤の「クレオソート」を、しっかり塗った覚えがあります。まさに、あの正露丸の強烈な匂いでした。木材を腐敗から防ぐために使われて来た物と、同じ物を飲んだ記憶が、『大丈夫だったんだろうか?」との思いと共に蘇って来たのです。

中国の知人たちは、この日本製の正露丸を、お腹を壊してしまった時に、好んで「食べる(吃chi/食べるという意味の言葉/日本人は〈飲む〉のですが)」ために、買って持ち帰っています。街の薬屋さんに行くと、中国製の同じクレオソートを原料にした薬があるようです。

かつては、植物の樹液を飲んだり塗ったりしていたのですが、「ドクダミ」の葉を揉んで、おできに塗り込んだこともあります。「ゲンノショウコウ」を茶葉にして煎じたのを飲んだこともありました。そのように、以前は、西洋薬ではない、「民間薬」が、よく使われていたわけです。

その民間薬の筆頭格の〈アカチン〉の製造が、近々終わるとのニュースにありました。それで懐かしく思い出したのです。現在、私の《愛用薬》、旅行する時に、必ず持ち歩く薬があります。娘が買って送ってくれた「消毒クリーム」と「メンターム(近江兄弟社製)」です。そして、外出時には、財布の中には、薬付きの「傷絆創膏」もあります。手などを怪我をした人に、『ちょっと待って!』と言って、何度か貼って上げたことがあります。

(「ドクダミ」の花です)

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