北原白秋の詩に、「鳳仙花」を読んだものが幾つかあります。福岡県柳川の出身の白秋は、夏咲く鳳仙花を、子どもの頃から、よく眺めたのでしょうか。また、朝鮮半島や沖縄でも咲く、この花のことを聞いていたのかも知れません。
薄らかに紅くか弱し鳳仙花人力車の輪にちるはいそがし
しみじみと涙して入る君とわれ監獄の庭の爪紅の花
鳳仙花われ礼すればむくつけき看守もうれしや目礼した
中国の新疆ウイグル自治区あたりでは、女性(ウイグル族)が、鳳仙花の花の汁に、明礬(みょうばん)を入れて、作った液体を、指の爪を染める風習があるのだそうです。そのマニュキアで染めた爪の紅が、『初雪の日まで消えなかったら、恋が成就する!』といった言い伝えがあるのだそうです(朝鮮半島で言われてるそうです)。新疆ウイグルから、韓国や沖縄に、そういった風習や遊びや文化が伝わったのでしょうか。
地理的にも近い、福岡にも、そう言った少女たちの遊びの風習が伝えられていたのかも知れません。それででしょうか、白秋が、「爪紅(つまぐれ)」といった詩を作っています。
いさかひしたるその日より
爪紅(つまぐれ)の花さきにけり
TINKA ONGO の指さきに
さびしと夏のにじむ
この詩の「TINKA ONGO」とは、小さな女性といった意味だそうです。柳川の方言では、そういうのでしょうか。家内の母が、柳川に近い、久留米の出身ですから、そう言った方言で呼んでいたのでしょうか。また、そんな少女の「爪紅("つまぐれ"とか"つまくれない"と読みます)の遊び」もしたのかも知れませんね。この「鳳仙花」が咲いて、弾けて飛んでいく種子が、あちらこちらに飛散して行くのです。この夏に咲いた花も、種子を弾き飛ばせて、来年も、あちこちに花を咲かせるのでしょう。
中国では、「指甲花」と言うそうです。あまりあちこちを私は歩き回りませんし、街中に住んでいて、水辺や側道に咲いてるのを見かけたことがないのです。ここでは、木に咲く花が多くて、それに圧倒されてしまっているのでしょうか。
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