帰りの船に乗ろうと、大阪国際港で税関手続きを待っていましたら、私と同じ学校で日本語を教えている同僚と、偶然会ったのです。二人のお孫さんの手を引いて、奥さまとご一緒でした。京都でのお仕事を退職されて、中国にやって来て、奥さまの息子さん夫妻の子育てをしておられ、その余暇に、学校で日本語を教えておられるのです。夏と冬の休みに、決まって帰国されておられ、夏期休暇を終えて中国に帰るところだったのです。偶然だったのですが、『最近は、いつも船を使っているのです!』と言われていましたから、『もしかしたら、同じ船かな?』と思っていましたので、〈もしか〉が〈たしか〉になったわけです。
ご自分の子育てを終え、二度目の子育てをしているのを、端から見ていて、『自分にはできないなあ!』と思っていましたが、よくやっておられるのです。中国の家庭では、おじいちゃんとおばあちゃんが、学校への送り迎えをされていて、この同僚夫妻のように、100%の子育てをしている方も少なくないようです。お母さんとお父さんは出稼ぎといったケースが多いのです。
上海からバスか新幹線で帰ろうと思い、上海港に着いてから、バスターミナルか駅に行って、チケットを手に入れようと算段していたのです。ところが、彼の奥さまが、『孫たちの席があるので、これを利用して一緒に帰ったらいいですよ!』と言ってくれました。それでご好意に甘えることにしたのです。忙しく孫を追い回していて、大変だと思ってみていましたが、かえって結構、楽しんでおられるのを見て、孫が近くにいない私には、少々羨ましくも感じたのです。奥さまが叱り手、彼が慰め手、お二人のバランスがいいのか、良くしつけられていました。
上海に着きましたら、一足先に日本から帰ってこられていた、奥さんの息子さんのお嫁さん、つまりお孫さんたちのお母様と、おばあちゃんが出迎えておられました。美味しいお昼をご馳走になってしまい、上海駅の隣のバスターミナルに向かったのです。途中もう一人のおじいちゃんが入院されている病院に寄られたのですが、早期の退院と病状の恢復を願わされました。お孫さんの席を私にということでしたが、バスの担当者とすったもんだの交渉を奥さまがして下さり、やっとのことでバスに乗り込むことが出来たのです。『この時期、学生が多くて、新幹線も長距離バスも空席がないので、ちょうど良かったですね!』と奥様が言ってれました。きっと、その日には帰れなかったのに、席を譲ってもらったおかげで、無事に自宅に帰ることができ、大変に感謝した次第です。
やはり、『持つものは友!』だなあと思わされたことです。自分でチケットを求めていたら、1~2日遅い帰宅になったのではないかと思って、このご夫妻に心から感謝した次第です。狭い寝台席にお孫さんと二人で横になって、大変な目にあわせてしまったのですが、私だったら、『ちょっと迷惑だな! 』と思ったに違いないのですが、『構いませんよ!』と、大らかに言ってくださったのは、やはり中国人の太っ腹なのでしょうか、ありがとうございました!