納豆とくさや

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 わが家の夕食の食卓に、必ず載せられている「おかず」があります。それは「納豆」です。

 お隣の国で過ごしていた時に、その街には、日系企業で働く日本人が、けっこういらっしゃって、『あの通りの角の店に納豆があります!』と言う情報を得て、何度もバスに乗って買いに行ったのです。上海経由で、冷凍納豆が置かれてあったのです。言うまでもなく、とても高いのに閉口しました。

 その他に、オーストラリアからの留学生で、お父さんが東京の下町の出身で、オーストラリアの街で商店をされていて、功夫(カンフー)の修行のついでに、語学研修をしていた方が、〈納豆菌〉を持参していて、自家製で作ったのです。弁当箱のような器に入った物を、ニ、三度頂いたことがありました。菌がよく働いていないで、ネバネバなしの納豆だったのです。

 室町幕府の足利尊氏や鎌倉幕府を起こした源頼朝の祖に、「八幡太郎」と言われた源義家がいます。「下野守」を任じられて、この下野の地を治めていた方です。この方に、納豆の逸話が残されているのです。

 『八幡太郎義家とは通称で、平安時代後期に活躍した武将「源義家」のことを指します。義家は後の源氏勢力を形成するべく、京都から奥州平定を進めていきました。その戦でたどった道筋には、なぜか現在にも続く納豆の産地が多く含まれているそうです。なぜなのでしょうか・・・
戦に兵糧は欠かせませんが、その一つに煮豆がありました。その煮豆をワラで編んだ俵に詰め込み、馬の背に載せて携行していたそうです。でも、そのままではいくら進軍しようとも「ワラに入った煮豆」でしかありません。それがある偶然を経て、糸を引く納豆へと変化したようです。その条件とは・・・
それは「馬の体温」だといわれています。馬の体温はわれわれ人間より高い38度前後だそうですが、その38度というのが、ワラに付着した納豆菌が活発に繁殖する温度になります。(現在の納豆づくりでも納豆菌を加えた煮豆を発酵させる部屋の温度は38度ぐらいを目安に管理されています。)その条件によって元気になった納豆菌が煮豆に作用したことで、糸を引く納豆の原型のようなものができたようです。(ちなみにその戦では京都丹波山国地方よりの出兵が多く、現在もその名残で京都京北の山里では自家製納豆が作られ、「京都京北が納豆発祥の地」と村おこしをされておられます。)
現代の私たちは納豆という食べ物を認識していますから、もしその場にいたとしても「これ、腐ってるように見えるけど、食べてみたら結構いけるんやで~」などと言えるかもしれませんが、実際その場にいた兵士達は最初どんな気持ちで食したのでしょう・・・戦の中の食事ではそんな悠長なことは言ってられなかったのかもしれませんね。
そんなこんなで兵糧として納豆が偶然としてうまれ、義家が進軍した地域と帰ってきた京都にその製法が残り、その地ではいまでも納豆文化が続いているということのようですね。(「鶴の子納豆本舗」HPから)』

 スーパーマーケットなんてない子どもの頃、この納豆を自転車に積んで、売り歩いていた人がいました。同じ大豆から作る豆腐も、兄の同級生が、売っていたのです。

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 健康維持や促進に、《発酵食品》が良いことが分かっていて、どこの民族にもあります。伊豆諸島の利島で、中学校の先生をしていた方が、『ご家族で遊びにおいでください!』と招いてくださって、みんなで出かけた時、船着場付近に、伊豆名物の「くさや」作りの建物があって、そこにタンクがあったのです。くさやを漬け込む液が入っているとのことで、その匂いが強かったのを思い出します。

 その液が、「魚醤(ぎょしょう)」と言う発酵液なのです。くさやはその昔、離島の厳しい日々の暮らしの中から生まれた、生活に知恵のひとつだったようです。漁で獲った大切な魚を、より長く保存するために、桶の中の塩水に漬け込んで干し、干物にしていたのです。

 塩や水は、当時はとても貴重であったため、一度使った塩水に塩を足しつつ何度も漬け込みを繰り返したのだそうです。魚の成分から微生物が発生し、塩水が発酵、ついには独特な香りと味をもった「くさや液」が出来上がったそうです。その匂いを、豊島で嗅いだわけです。このくさや液の手入れは、主に女性が日々培ってきた感覚で維持・保存されてきています。

 母がしていた、あのぬかみその手入れと同じ手法でした。ぬかみその味がその家のお母さんの腕で決まるように、くさや液は島の嫁入り道具のひとつになったそうです。また、くさや液は古いものほど良いとされ、二百年以上前から手入れ保存されているものもあるのです。

 美味しいのですが、その匂いが嫌いな方がいるので、アパートの部屋で、買ったのを焼いて食べる勇気がありません。秋刀魚も、モクモクと煙を出す炭火のコンロで焼くのが美味しいのですが。スーパーの鮮魚コーナーんは、ほとんど見かけません。山奥で焼いたらいいのでしょうか。熊や猪が匂いにつられて出てきたら、どうしよう!

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