目を細めて

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 この土曜日に、夕食がすんで、片付けをしていると、家内が散歩で出会ったご婦人が訪ねて来られました。菜園で取れたきゅうりとナスをお持ちくださったのです。玄関で話をしていて、『お茶を淹れますので ご一緒に!』とお誘いすると、上がってくださ ったのです。しばらく 談笑して帰っていかれました。

 日中の暑さが、夜分になってから、和らいだので、エアコンのスイッチを切って、四階の我が家の全ての窓を開けたのです。そこにご婦人がおいでになられたわけです。通り抜ける風が心地よかったのです。そうしましたら、その風に、懐かしい生温かな匂いがあって、『なんの匂いだろう?』と思い出そうとしました。 散歩の時にも、時々感じる匂いです。

 匂いも、光景も、音も、光も、過去につながる出会いや出来事と関係があるのかも知れません。それって《夏の宵の匂い》なのです。1964年の今頃になりますが、夏休みに入って、牛乳の需要が鰻登りに多くなるので、牛乳工場のアルバイトが募集されていました。明日の天気や気温の予報に応じて、夜間に、牛乳を製造するのです。製造工程はオートメーション作業ですが、木箱に詰められた〈5本×9列=45本〉を、翌朝の出庫のために、各ラインに割り振って積み上げて行く作業が必要だったのです。

 元気で力を持て余していた頃ですから、どのくらいの重さがあったのでしょうか、ヒョイと持ち上げて手作業で、14、5段に積み上げて、幾山も作っていくのです。瓶が割れない様に積み上げていくコツを飲み込むと、上手に放り上げて積み上げられる様になります。昼間の社員よりも上手に作業できる様になっていったのです。班長さんに褒められ、学生バイトさんたちは得意になっていました。

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 今では、1リットル紙パックが主流になって、ほとんど見られなくなったのですが、瓶に入った何種類もの牛乳やジュースが生産ラインから、ベルトコンベアーで、『ガチャガチャ!」と瓶の触れ合うのとコンベアーの回転音がし送られてくるのです。天井は高くありませんが、バスケットボールのコートが二面くらいの広さの冷蔵庫の中に、ベルトコンベアーが出庫口まで何筋もあって、そのコンベーアーの脇に積み上げていくのです。

 4年間、夏休みの間、やったアルバイトです。あの頃の夜間の控え室から出て冷蔵庫に行く間に嗅いだ、牛乳の匂いの混じった夏独特の生温かな匂いが、今夕、ふとしてきて、懐かしく思い出したのです。今時では、どうしているのか、その作業を見てみたい思いがしてきます。喉が渇いたら、どの牛乳でも飲んでいいと言われたら、そんなに飲めないものでした。

 あの会社の牛乳の味を覚えたからでしょうか、今でも、同じ会社の1リットルパックを、いつも買っています。あのアルバイトをした年の秋、10月1日に、オリンピック東京大会が行われたのです。57年前の夏の思い出です。東海道新幹線が開業し、帝国ホテルが、レストランを新幹線で初めて今空いた。その食材の搬入のアルバイトを、同級生が見つけてきてきてしていました。おいしい暑いハムをお腹いっぱい食べさせてもらい、時給も破格でした。

 思い出ばかりの夏、もう赤とんぼも飛び始めて、秋の気配が、酷暑の中にも感じ取られます。” TOKYO2020大会 “ 、若者の祭典を、私の弟は volunteer で、パラリンピック終了まで、もう孫たちの世代を、目を細めて世界中から参集している選手たちを支えているのでしょう。健康が守られます様に!

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