出湯行

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 「山の出湯(いでゆ)」、と言うか「村の温泉(いでゆ)」に、東京圏の新コロナ緊急事態宣言解除を受けて、久し振りに北関東の村の奥深い部落に出掛けました。日光市に併合された山間地に、企業の休養施設を開設し、温泉も掘削して素敵な保養所があります。

 ここは社員の研修や休養のためだけではなく、教会関係のCSキャンプや修養会のために用いられる自然の懐の様な施設なのです。個人でも使うことができ、病中の家内には最適な環境です。『天国の次に!』と家内が評するほどにお気に入りの施設です。住み始めて2年が経過し、人情にも土地柄にも水や空気にも慣れて、やっと栃木県人と言った自分を認められそうになってきた県北の地です。

 昨日は、その温泉保養所の方のご好意で、六十有余年ぶりに、中禅寺湖、華厳の滝、素通りしてしまった東照宮や陽明門を遠くに眺めはしたものの、懐かしい場所にお連れ頂きました。その年月を遡り、記憶をたどりましたが、記憶や思い出が断片的に蘇ってきたのです。人の作った物は変わってしまっても、自然はそのままといった感じがしてなりませんでした。

 華厳の滝ですが、修学旅行の時に、エレベーターがあったかどうかは覚えていませんが、100mの距離を、文明の機器で降りたあと、七十段の階段を、家内の手を引きながら降りたのです。案内してくださったのは、北九州の出身で、大阪、東京とご自分の事業をされて、今は、会長さんに惹かれて、その保養所で働いている方です。小倉弁訛りの大阪弁を、遠慮なしに使う九州人なのです。
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 顧客でもないただの宿泊客に、特別な機会を設けてくれて、『次回も何か考えておきましょう!』と言っておられました。初春の中禅寺湖の湖面の青さ、雪山の白根山の白さ、男体山の岩肌、いろは坂などを経験させていただき、まばらな観光客がいるほどでした。いろは坂ってあんなにクネクネしていたのか、はしゃぎながら登っていた小学生でしたので記憶は鮮明ではありません。

 その宿の保養所は、温泉を掘削して、良質の温泉掛け流しで、人気なのだそうです。会長さんが優しい方で、従業員として特別な雇用をされておいでです。また、その温泉を、地元の方にも、無料で解放されていて、有難がられておいでなのです。スポーツ用品のチェーン店の草分け的な企業を、今日の大きな企業にされた有能な実業家の会長さんが、まだ五十代の頃にお目にかかったことがありました。

 今朝は、『ホーホケキョ!』の鳴き声が聞こえ、帰りを惜しんでくれたかの様でした。魚の好きな家内に、賄いのご婦人が特別献立で用意してくださり感謝でした。その上、低廉な料金で使わせていただけるのは感謝でいっぱいです。雪道で転んで腰を悪くされた年配の方を、準職員として雇用されていて、何かにつけて企業自体が優しいのです。
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 家内は、『天国の次に素敵な所!』と感謝しているのです。近所のおばあちゃんに連れられて、温泉にやって来た三歳のお嬢さんが、一緒に入浴していて、歌が好きなのだそうで、湯船の中で、『てんにいますわがちちよ!』と家内と二人で賛美をしてる声が聞こえてきました。人家のない山深い中の出湯は、コヒガンザクラ、水仙、スズラン、サルビヤに負けず、花が咲いたかの様に感じられた週日でした。

 退院して、やって来た四人の子と配偶者、その子どもたちで家族会をした去年の正月には、まだ痩せていたのですが、従業員のみなさんが、『肥られましたね!』と喜んでくださったのです。その上、華厳の滝の階段を、自力で登り降りできたことにも感心されておいででした。家内も自信がついた様です。六週目毎の治療の送り迎えをしてくれた長男も、一泊だけしてくれ、子どもを代表して親孝行してくれた今回の出湯行でした。

(華厳の滝、草津白根山、そして階段を上がる家内です)

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