賢明

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 私たちが長く住んだ華南の街で、四川省出身のご婦人とお会いしたことがありました。大柄な方で、きっと少数民族の出身だったのでしょうか。この方が、とても大きな精神的な束縛を経験して大変だったことがあったと言われたのです。その時は、解放されていて、喜びに溢れてお話ししておられました。

 よく、人に精神的な問題について、〈先祖の呪いだ〉とか言って、家系の中の悪事が、精神的な問題をもたらすのだと、原因を語る方がいます。果たしてそうでしょうか、このご婦人のお話を聞いた時、先祖の悪事が原因ではなく、その人個人の生き方や選びに関わる問題であることだと確信したのです。

 この婦人は、長らく「ヨガ」をし続けてこられ、それが原因で、精神的な問題を持ってしまったことが分かったのだそうです。日本でも、スポーツクラブやシニアクラブなどで、よく「ヨガ教室」が開かれているのです。この「ヨガ」は、街角でする軽運動やストレッチ、精神的な疲労回復だけなのでしょうか。

 ヨガによって、確かに意識上の変化は得られます。しかし、そのエクササイズを続けていくうちに、心の奥底に、抑圧的な影響力が生み出されるのだそうです。そして、感覚が鋭敏になって、不安や心配が生み出されてくるのです。瞑想が、精神性を高め、意識の高嶺に到達する経験ができる様になると言いますが、その途中で気絶したり、精神的な不安も生じさせるのです。

 自分の現実と空想や瞑想の世界の境界線がはっきりしなくなるのです。感覚が鋭敏になる一方で、心配や不安に襲われ、不安定になってしまいます。ある人は、長時間にわたって意識が戻らないこともあり得ます。

 日本で英語教師をしていた青年が、日本文化に関心を示して、禅宗の寺を訪ねました。有名な武将の菩提寺で、その若い住職と気が合ったのだそうです。その住職は、禅と共に、ヨガにも通じていて、そう言った交わりを、しばらく続けていたのです。密教的な瞑想などに触れる間に、これを続けては危険と感じて、その交わり辞めるために、『お寺に一緒に行ってください!』と頼まれました。それで彼に同道して、その住職を訪ねめたのです。

 日本語の上手な方でしたし、住職も英語ができ、通訳は不要でしたが、彼は、私にそばにいて欲しかったのです。話をしてる間に、その住職が怒り始めたのです。結局、それ以上、そこにいられず、一方的な残念な結果別れの様になって、そこを辞したのです。そうしたことで、彼はホッとされていたのが印象的でした。

 四川省出身のご婦人も、アメリカ人英語教師も、軽い気持ちで関わりを始めたのですが、実は十分に、ヨガは、神秘的な東洋宗教である、ヒンズー教と深く関わりを持つのです。深入りすると精神的な問題を持ちやすく、その奥深い瞑想術は、危険です。

 華南の街の検察庁で、検事をされていた若いお母さんが、同僚に勧められたのでしょうか、ヨガに関心を示され、『クラブに参加してみたい!』と、思って家内と私のところにやって来て、相談されたのです。私たちは猛烈に反対したのです。子育てや仕事上の大変さの中で、そう言ったものをやってみようとされたのですが、やめられたのです。

 この女検事さんは、家内が一週間、省立医院に入院した時には、子どもさんをご両親に預けて、家内の身の回りに世話を何日かしてくれました。ヨガは、スポーツでも、リラクゼーションでもなく、心の奥深いところに強い影響力を与え、〈不安障害〉をもたらしたりしますので、気をつけなければなりません。あの二人がやめたのも、彼女が近づかなかったことも賢明な決断でした。

(「天府之国」と言われた四川省の風景です)

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