静思

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 中学校に通学するために、上下車した JR中央線の駅の近くに、「名画座」がありました。大学が、その駅の周りに何校かあり、その学生を目当てに、けっこう評判の映画が、三本立てで上映されていた映画館でした。中学校には制服があって、どこの学生か分かっていて、授業をさぼってチケットを買うのに、店主は売って、観せてくれました。

 そこで何度も観たのが、ジェームス・ディーン出演の「エデンの東」、「理由なき反抗」、「ジャイアント」でした。アメリカの俳優に憧れるという矛盾の偽軍国少年だったのです。テキサスの大牧場で働く牧童のジェットを、ジミーが演じたのです。広大な牧場を舞台に、物語が展開され、仔牛を丸焼きするバーベキュウ・パーティーの場面には、アメリカの豊かさを知って圧倒されました。

 そのジェットが、一人で石油の掘削をし続けているのです。牧場の地下には、原油が埋蔵されていると信じていたからです。ある日、その小さな掘削穴から、石油が天高く吹き上げるのです。その原油を全身に浴びて、真っ黒になったジェットの姿に、圧倒されたのです。日本では想像できない光景だったからです。

 その原油で汚れた姿のままで、同世代の牧場主に、石油掘削の成功を見せつけにするために来て、何かの言いがかりをつけて、殴り倒す場面がありました。ジェットは一躍石油王、大富豪となるのです。

 その重油塗(まみ)れの姿を、重油タンカーの座礁で、漏れた重油をかぶって、真っ黒にされた海鳥を思い出したのです。インド洋の島国モーリシャス沖でも、近頃、座礁事故がおき、原油が流出しました。人口が増え、工業化が進むと同時に、石炭などの固形燃料から、石油やガスなどの液体燃料に移る、燃料革命が起こり、莫大な量の地下資源が掘削されて行きます。
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 それに伴って、石油タンカーの事故が頻発し、生態系に甚大な被害を与えて、破壊してきています。その原因は、輸送船の積載量を多くする、船の大型化なのではないでしょうか。いっぺんに多量の原油を運んで、コストダウンを図るからでしょうか。そう言った儲け主義の結果が、この写真の様な、哀れな自然界の破壊であり、それが見せる惨状が、〈人の業(ごう)〉なのでしょうか。

 今回のコロナ禍は、欲に踊る人間が、天然自然の理を無視し、秩序を破壊したことと、何か関係がありそうに思えてなりません。〈疫病の蔓延〉は、単なる自然現象だけでない、人間への警告の様にも聞こえ、見えるのです。傲慢で、感謝を知らない人間に、もう一度立ち止まって、静まって考える時が与えられていないでしょうか。

 アメリカの社会で働いている娘が、先日、連絡して来ました。経常利益が上がらず、このままでは、会社が立ち行かない事態に直面していて、人員整理をしなければならないのだそうです。共に働く仲間に代わって、管理職の彼女は、身を引くことを考えている様です。全世界で、当たり前であった好調さが、乱れて、壊れて、経済界に厳しい現実をもたらせているのです。生きにくい時代のただ中で、生活に変化が生じています。

(ジェットを演じたジェームズ・ディーンと重油まみれの海鳥です)

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