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季節に「音」があるのでしょうか。小林一茶が、
ほろほろと むかご落(ち)けり 秋(の)雨
と詠んでいます。「むかご」は、〈零余子〉と漢字で表記しますが、山芋の蔓になる「実」で、食用として食卓にのることもあります。
林の中の蔓に見付けて、手で摘んだことがあります。頬張って食べた記憶もありますが、茹でて食べるのが一番で、秋の味覚の一つでもあります。山芋を〈自然薯(じねんじょ)〉と言ったりします。
オリンピックのマラソン競技を、札幌で行うと聞きましたが、前回の「東京オリンピック(1964年)で、円谷幸吉が健闘して、《第3位》で、銅メダルに輝いたのを思い出します。私の上の兄と同じ年の生まれでしたが、メキシコ大会での活躍が、過剰に期待されていましたが、腰痛などで、その期待に耐えられず、自らの命を絶ってしまったのです。
責任感も強かったのでしょうか、〈挫折体験〉についていけなかったのかも知れません。人生の重大な決断を、自ら下したスポーツ選手の一生として、重いものがあります。彼の遺書は、次の様な一節で始まっていて、その文面が残されています。
『父上様 母上様 三日とろろ美味しゅうございました』
とです。彼の出身の福島県須賀川では、「三日トロロ」と言うのでしょうか。『「三日とろろ」は、お正月の三日目に、長寿や健康を祈願してとろろ汁を食べる風習です。山芋には整腸作用や滋養強壮作用があるとされることから、お節料理のご馳走に疲れた胃をいたわる効果もあります。(ヤマサ醤油のレシピ)」とあります。
今頃でしょうか、母がよく作って食べさせてくれました。手伝いで、摩った長芋を、摺鉢の中に入れ、〈摺りこぎ棒〉で摺ったのです。そこに、母が作った〈だし汁〉を入れて合わせていました。麦飯の上にかけて、ツルツルと飲む様に食べたものです。円谷にも、私にも、美味しい夕食だったのです。これも《お袋の味》で、どんな料亭の「とろろ汁」もかなわない味でした。
「ほろほろ」の音は想像の音でしょうけど、そう聞こえてきそうな情景が浮かんできます。山椒の木の枝で作られた、イボイボの〈摺りこぎ棒〉が、摺鉢を擦る、「ゴロゴロ」の音が、秋を秋らしく思い出させてくれる、ちょっと物悲しい曇り空の晩秋です。
(“ マジカルキッチン ” からとろろ汁ご飯、“ photohito ” の零余子です)
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