長崎県

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 対馬海峡に壱岐(いき)島があります。長崎県の島嶼部になります。24000人ほどの人口があり、島の周辺に小さな島が多くあるのです。日本の古書の「古事記」や「魏志倭人伝」にも出てくる島で、律令制の下では、「壱岐国」と呼ばれていました。江戸期には、平戸藩の統治の下にあり、松浦氏の居城がありました。

 私の最初の職場に、父ほどの年齢で、この壱岐出身の上司がいました。よく連れ歩かれて、お供をしたことがありました。故郷の話は聞きませんでしたが、杉並の阿佐ヶ谷のlお庭に、タイサンボクの花が咲くと、枝を手折って、電車で持ってこられて、年配の女子職員(どこかの省庁で初めて女子部長になった経歴のある方でした)が職場の玄関に飾っていました。

 長崎県と聞きますと、いつもこの上司を思い出してしまいます。学校に行っていた時に、九州旅行をして、この長崎を訪ねたこともありました。原爆の爆心地の長崎市に参りました時に、平和祈念像を見ましたのが、1964年の夏でしたから、爆心地も、すでに綺麗に整備されていました。原爆投下当時の長崎の人口は、24万人ほどでしたが、およそ74000人が亡くなられているのです。

 戦争は、今も昔も、被害者の立場でも、加害者の立場でも、共に極めて悲惨なものであることを、心に銘記された長崎訪問でした。長崎から、平戸口という港町に行きました。そこは日本の鉄道の最西端の駅で、今ではJR線から、第三セクターの松浦鉄道会社の「たびら平戸口駅」になっています。そこから船で平戸に渡ったのですが、今では架橋されていて、橋で渡ることができているようです。


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 江戸期には、長崎の「出島」が、海外との貿易や文化のためにひらかれた唯一公認の港だったわけです。医学を学ぶためにも、商用のためにも、現代人の好きな旅でも、多くの人が全国からやって来て賑やかだったことでしょう。鎖国下の江戸期には、「西国への憧れ」があったのでしょうか、「ギヤマン」、「ボンタン」、「ジャガタラ」など、長崎にまつわる外来語が象徴する地であったようです。

 この平戸を舞台にした、江戸初期の悲しい物語りを歌った歌があり、小学生の頃によく聞きました。昭和14年(1939)10月に、作詞が梅木三郎 、作曲が佐々木俊一の「長崎物語」と言う歌が発表されたのです。

赤い花なら 曼珠沙華
オランダ屋敷に 雨が降る
濡れて泣いてる ジャガタラお春
未練な出船の ああ鐘が鳴る
ララ 鐘が鳴る

坂の長崎 石だたみ
南京煙火に 日が暮れて
そぞろ恋しい 出島の沖に
母の精霊が ああ流れ行く
ララ 流れ行く

平戸離れて 幾百里
つづる文さえ つくものを
なぜに帰らぬ ジャガタラお春
サンタクルスの ああ鐘が鳴る
ララ 鐘が鳴る

 ここで歌われた、「ジャガタラお春」は、実在の人で、父親がイタリア人で、日本人のお母さんから生まれた子どもでした。現在のジャカルタにいたお春は、徳川川幕府による鎖国政策のために、帰国することが禁じられる中、望郷の念に駆られて書き送ったとされる「ジャガタラ文(ぶみ)」が残されています。明暦元年(1655)頃に、日本に届いたとされています。悲しい物語を残す点でも、長崎は、公式には、外国への唯一に窓口だったわけです。

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 長崎県は、県都は長崎市、県花は雲仙ツツジ、県木はヒノキとツバキ、県鳥はオシドリで、人口は128万人です。古代には栄えた地で、県下に500もの古墳を残しています。律令制下では肥前国、対馬国、壱岐国で、国府は備前佐賀にありました。県下の五島列島は、大陸との行き来の寄港地で、遣隋使、遣唐使の船が寄港した歴史があります。

 上海から船で、大阪港までの航路で、あの上海港から船出して、最初に見える日本の地は、この五島列島でした。一昼夜、海ばかりだったのが、緑が濃い島影が見えた時は、『アッ、日本に帰ってきたんだ!』という思いが、やはりしてきたのを思い出します。カモメが飛んでいて、それも見えなくなり、飛び魚が船の脇を飛ぶ姿しか見えなかったのが、島影が見えてくるとホッとしたのが昨日のようです。
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 船には強い方ですが、何時でしたか、台風接近の中を、上海を出た船が前後に大きく揺れて、船酔いなどとは縁のない船員さんたちも酔ってしまったほどで、当然の様に自分も吐いてしまうほどでした。大会をゆく船など、木の葉と同じで、波に任せながらも、台風にはかないませんでした。

 私の母も、「ジャガタラお春」ではなく、「タイワンのおたか」になるところを、警察に保護されて、難を免れたことがあった、と聞きましたから、歌にはならない戦争前の危ない時代を生き抜いたのだと思います。さて、今日の長崎は雨でしょうか。

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