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今ではそんなアナウンスはしないのでしょうけど、雨降りの日の店のお客様の案内アナウンスで、『お足もとのお悪い中、ご来店くださいましてありがとうございます!』と言っていて、雨降りの中の来客へのありがたさを、そう表現していたのです。
お客様は王様で、どんな我儘でも聞いてしまう風潮があったでしょうか。怒ったり、注意したりなどは禁物でした。サーヴィス業って大変だなあと、つくづく思ったことがあります。
長らく生活した華南の街の小さな店に買い物に入ると、『要什么yaoshenme?/何が欲しいんだい?』と言われました。『いらっしゃいませ!』と言わないところが、何か中国的でした。でも、来店の感謝がないと言うのに慣れるのに、時間がかかってしまったのです。
と言うのは、日本では、少し過剰にお客様を気持ち良くさせる術を心得ているのかも知れません。ほとんど中華系の飛行便を利用していまして、一度だけ、飛行場を替えて、ANAの便を利用したことがありました。いつもと違うサーヴィスに、新しい感動があったのです。
というか、サーヴィスがイッパイの感じだったからです。徹底してサーヴィス教育を受けて、水ももれない様に気遣いがなされていて、正直言って、『大変だなあ!』と感じたのです。微に入り、細に入り、サーヴィスに徹していたからです。
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楽しく仕事をこなしているのですが、もう少し、手抜きをしてもいい様な気持ちがしてしまったのです。このサーヴィスに語源ですが、「service(サービス)」は、「仕える」、「召使」という意味を持つ「serve」の名詞形だそうです。また、ラテン語の「servus」を語源としていて、「奴隷」という意味です。具体的には、次の様なことを言っています。
① 点検、修理
② 奉仕、世話、貢献、尽力
③ 勤務、勤労、雇用、業務
④ 接客
⑤ 公共事業
⑥ 電気やガスや水道のなどの供給
⑦ 軍務、兵役
⑧ 宗教的な儀式、礼拝
兄弟自慢になってしまうのですが、もう退職してだいぶ経つのですが、つい先頃も、全国紙のインタビューを、私の次兄が、「ホテルマン」としての経験談が、その新聞記事に載っていました。兄は、顧客だけではなく、おいでになられたお客様の名前を、苗字だけではなく、フルネームで覚えてしまうのです。次に来店の時には、その名で呼んで歓迎を示すのです。それで、その次の来店時には、手土産があったそうです。
難しいテクニックではなく、わざわざ多くあるホテルに中で、自分の勤めるホテルを利用してくださるお客様を、好い気持ちにさせる術と言うのは、日常的な感謝や敬意なのでしょうか。人には、《認められたい》との欲求があって、それを実行することなのかも知れません。それこそが、真のサーヴィスの様です。雨の日の来店を、《お足元の悪い中》と言われたら、雨に濡れた足元など気にしなくなるからです。
(歌川広重の描いたものです)
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