音と臭い

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毎朝、朝6時になると、鐘の音が六つ聞こえてきます。近くのお寺の鐘です。鐘楼の鐘を突く音だと、もっと情緒があっていいのでしょうけど、スピーカーの合成音の様です。なんだか百年ほど、タイムスリップしている様に感じてしまいます。元旦の朝も、同じように聞こえてきました。

♭ ゆうやけこやけで ひがくれて
やまのおてらの かねがなる
おててつないで みなかえろ
からすといっしょに かえりましょう

こどもがかえった あとからは
まるいおおきな おつきさま
ことりがゆめを みるころは
そらにはきらきら きんのほし ♯

空気が澄んだ日は、踏切の列車通過を知らせる音も聞こえてきたりします。ひっきりなく聞こえてくるのは、救急車の患者搬送のサイレン音です。消防署と救急病院の間に住んでいるからです。

♭ 昨日の夢 流行の唄 君の言葉 響く靴音
町のざわめき踏切の前立ち止まり

頭の中真っ白になるまで考えてたいんだ
それは君の事でも僕の事でもなんでも構わない

目の前をいつの間にか通りすぎていた
八月の風を感じながら

気がつけばそこは人ゴミ溢れ
かき消されたため息さえもう何も届かない

何が何だか もうさっぱりだ声を聞かせておくれ
一体何だって言うんだ!?何か言っておくれ

交差する電車猛スピードで目の前を加速する
一瞬僕から音が遠ざかる…

気がつくと踏切の前
同じ場所にいる僕がいた
何も変わらない何者でもない
僕がここにいただけ ♯

また最近は、夕刻になると、拍子木を打つ音がしてくるのです。『火の用心、しゃっしゃりませ!』の口上はないのですが、冷たい空気の中に響いてくる音も、随分と懐かしく感じられます。

♭ チョキチョキ チョッキン 火の用心 ♯

子どもの頃に聞いた音で、もう聞くことのできない音が、いくつもあります。〈焼き芋売り〉の呼び声です。自転車に乗った〈トーフ屋〉のラッパ音、〈納豆売り〉の呼び声、〈竿竹売り〉の呼び声、〈ちり紙交換)の呼び声、〈包丁とぎ/鍋穴の修理/傘の修理〉の呼び声なんか、もうどこでも聞こえなくなってしまいました。

華南の街には、一組の竹の板や茶碗を片手で打ち鳴らして、何ていうのか知りませんが、伝統のお菓子を売り歩くおじさんがいました。一度だけ買って、興味津々で食べたことがあったのです。きっと故郷の懐かしい味なのでしょう。長葱と独特の味噌と小麦粉で作った物を、リヤカーに独特な窯を載せて、そこで焼きながら売り歩いている知人がいました。家内が、それを頂いて帰ってきたことがありました。

音だけではなく、臭いが思い出され、幼い日が蘇ってきそうです。アッ、カーバイトのアセチレンの臭いがありました。電池のない時代には、携帯ランプとして使われたり、お祭りの屋台の照明に使われたりしていました。あの匂いは、もう一度かいでみたいものです。

今年は、どんな珍しく、郷愁を誘う懐かしい音を聞くことができるでしょうか。華南の街の音楽堂で、演奏会があって、何度か招待状をいただいて、聴きに行ったことがありました。音楽大学の教師が、そんな機会を設けてくださったのです。懐かしい正月の雰囲気が、何と無くして来る朝です。

(カーバイトランプです)

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