『覚えていて・・・』

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「タチアオイ」

 湖南省の名蹟に、社員旅行で出掛けて帰ってきた教え子が、今朝、『今日も休みになりましたので!』と、お土産を下げて訪ねてくれました。総勢80名の二泊三日の旅行だったそうです。学校を卒業して、私たちの町から、そう遠くないところにある会社(日系企業)に就職して、週末に時々訪ねてきてくれる方です。日本語を使う機会は少ないのだそうですが、それでもずいぶん日本語が流暢になったのを感じました。また広州の会社に就職した卒業生から、先週、近況報告を加えたメールが届きました。文面は分かるのですが。彼もまた、日本語を使うことのない職場で仕事をしていますので、『せっかく日本語を専攻し、4年間も学んだのですから、忘れない努力をしてくださいね!』と返信のメールを出しました。

 来月、結婚をするカップルが、私たちの結婚生活が42年のキャリアがあるということで、『結婚について教えてください!』と言って、先週、家内と私を訪ねてきました。大学を卒業して、2年の専門コースを設けている学校で学び、卒業と同時に、そこで知り合った男性と結婚をするのだそうです。幸せになって欲しくて、経験を踏まえてお話をしたのです。この若い友人は、学生の頃からわが家にやってきては、台所の後片付け、家内が入院した時には、下(しも)の世話までしてくれた方で、明るくてハキハキしている女性なのです。『こういう女性と結婚する男性は、きっと幸せを噛みしめることに違いない!』と思ってきたのです。

 その折、『「健全な結婚生活」や「確りした家庭」を構築している町や国は、きっと繁栄していくに違いない!』こともお話させていただいたのです。結婚や家庭が軽視される現代、結婚や家庭に夢を持って生きて行ってほしかったからです。彼らの間に生まれてくる次の世代が、この二人をモデルに、次の世代の結婚生活が決められていくのですから、やはり大きな使命が結婚にはあるのだろうと思うのです。この二人に、昨日あったのですが、『先日はありがとうございました!』と言わないのです。実は、それが、ここ中国では普通なのです。

 私たちの国では、その日にお世話になったら、『今日は、本当にありがとうございました!』と言って辞します。そして次に会った時には、『先日は、お忙しのに、私たちのために・・・』と、再び感謝をするのです。ところが、中国では、その時に感謝をしたら、一回きりでことが終了しているのです。アメリカ人と8年ほど一緒に過ごしましたが、彼らもまた、二度目の感謝をしませんでした。それで一般的に、日本人は、『あれ、この間のことを何も言わないんだけど!?』と怪訝な思いにされることが多いのです。これも、文化や習慣の違いなのです。私たち日本人は、『またお会いしたら、感謝の言葉を忘れないようにしなくては!』と心に銘記するのです。それで、『先日は・・・・』という、これが日本の文化でして、ずいぶんと七面倒臭いのではないでしょうか。《過去にふりかえる日本人》と、《明日に目を向けて生きている中国人(アメリカ人)》の違いがあるのではないでしょうか。

 私が住んでいた街では、こんなことがありました。家族旅行をして、ちょっとしたお土産をもって隣り近所にあいさつをするのです。そうしますと、時を置かずに、何かお返しを持ってくるのです。そのタイミングが、嫌いでした。わが家は、もらったことを覚えていて、その感謝を、別の機会にするのに、即刻の返礼には戸惑ったのです。『お返しを忘れたら、何か言われないか!』といった恐れが、そういった行動を取らせるんだろうと思っていました。とても寂しい、心の通わない近所付き合いでした。こちらは、『覚えていて・・』という隣近所です。夕べは、おばあちゃんが作った、「木綿豆腐」を、幼稚園のお孫さんが、玄関を,、トントンと叩いて、持ってきてくれたのです。美味しいのです!『また何かあったら覚えていて・・・』の午后であります。

(写真は、五月の花の1つ「立葵(たちあおい)」です)

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