選手生命について思う

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 組織や団体を維持して、その経営収益を増し加えるために、舞台で歌う歌手、同じ舞台で舞う踊り手、また球場でボールを投げ、打ち、捕り、走る選手たちが誕生しては、消えていきました。そんな彼らの活躍を見続けてきて、その中からわずかなスターたちが誕生していきます。その時の歌手や役者や選手たちの活躍に、一喜一憂しながらフアンは見聞きして、心躍らされてきているのですが、その会社や団体の事情は、スターとなった選手、歌手、踊り手、俳優などがいて、どんな忙しいスケジュールでも、人気のある間に、活躍させて、収益を上げさせたいのでしょう。

 兄の2、3年上の世代のプロ野球選手で、パ・リーグの西鉄ライオンズ(現在の埼玉西武ライオンズです)に、名ピッチャーの稲尾和久がいました。お父さんが大分の漁師で、船で港に帰ってくると、お母さんが、その魚を売りさばいていたのだそうです。彼は、子どもの頃から、お父さんの船に乗って、お父さんの漁の手伝いをしていていたようです。その経験で、強靭な足腰を得たそうです。

 高校を卒業してから、プロ入りをし、14年間に、276勝と言う成績を上げていて、あの時代の日本プロ野球では、最高の存在感を示した投手でした。でも、この方は、1956年から1969年まで現役を続けられたのですが、その最盛期は、『私の投手人生は8年で終わった !』とご自身が述懐されているように、8年間という短い期間だったのです。後半の6年間は、低迷し、32歳で現役を引退してしまっています。長く投手で活躍できる方法が考えられていない時代だったのでしょう。

 「鉄腕」と言う異名をほしいままにしていたのですが、チームへの貢献は驚くほどのものがありましたが、稲尾和久ご自身の野球生命は、実に短命だったのです。体一つで生きる世界で、やはり酷使による〈燃え尽き症候群〉だったと言えるでしょうか。

 以前、『息子には、絶対アメフトはさせない!』と、次女が言っていたことがありました。と言うのには、理由があったからです。アメリカの国民的スポーツの「アメリカン・フットボール」で活躍した選手の中、現役を引退した後には、肉体上の損傷だけではなく、メンタルな面での問題が大きいと言うのです。それ猛烈なプレーで、脳の障碍を負ったことに起因しているからです。

 一人のアメフトのスター選手だった、ヘルナンデスが、殺人罪で服役中の刑務所の中で、27歳で自殺しています。死後に、頭部が解剖され、脳の損傷を見付け、Stage 3 の「慢性外傷脳症」だったことが分かったのです。野球やアイスホッケーやラグビーやアメフトなどの激しい運動をした選手は、その負傷の後遺症を残す可能性が大きいようです。

 観衆を沸かせ、チームに貢献し、チーム経営の球団を富ませた選手が、そのような損傷を肉体に受けていて、引退後の人生は、闘病であったり、犯罪を犯したりするケースが、多いのだそうです。それを聞くと、スポーツをしてきた身としては、悲しくて仕方がありません。

 次女の子は、high school age の野球選手でした。ピッチャーでもバッターでも活躍し、大学に scholarship (奨学金)を貰って推薦入学の機会があったのですが、彼は続ける願いがなかったのです。野球産業の卵たちへの大人の思惑などを見聞きする機会があって、それを知っての彼の決断でした。

 頭部損傷が原因で、様々な後遺症の現れがあります。それがわかった今は、活躍時の選手時代に、健康管理を十分に果たす必要があるようです。初めに取り上げました、稲尾和久氏は、『投げるのが好きです!』と言って、連投に継ぐ連投をした結果、肘や肩を痛めてしまったのですし、勝つためには、優秀な投手起用は避けられなかったと言うチーム事情もあったのですが、それを考えていなかった頃の連投が、稲尾和久の投手生命を縮めてしまったわけです。

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 今、大リーグで活躍中の大谷翔平も、これまで肘の手術を、二回もしています。稲尾時代には、手術など考えられない時代でしたから、医療による再生など思いもよらなかったことです。こう言った再起が良いのかどうか、今、私は考え中です。やはり、人間の肉体や精神には限界があります。そう言った選手たちを保護するためですが、それを考えずに、活躍を期待し、選手自身も、一度きりの人生を、最高にパホーマンスしたい気持ちは分かります。

 野球部のキャッチャーの次に、ボールの遠投の記録を持っていたのに、野球ではない、ハンドボールを私はしていました。でもその遠投のおかげで、肩を痛めてから、もう遠くには投げられなくなってしまいました。稲尾和久や大谷翔平、その他、志半ばで、怪我でマウンドを降りざるを得なかった多くの投手たちの気持ちが、少し理解できます。肩ばかりではなく、肘や膝や頭部などを痛めたスポーツ選手は、数限りなくおいでです。もし選手の健康管理が、適正になされていたら、もっとスポーツが楽しめたに違いありません。

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Gold nest egg concept for retirement savings and financial planning

 

 大人の世界の都合で、〈金の卵たち〉が、肉体的にも精神的にも社会的にも、損傷を与えられない科学的な配慮がなされて欲しいのです。激しい競争の中で、煽られた選手が、冷静に判断できないで、記録や収入や名声に踊らされて、お金儲けの世界で、消耗品のように、次から次と現れては消えていくような世界で、前途ある若い人たちが悲しむことがないように願ってやみません。

( 稲尾和久投手、漁船、iStockの金の卵です)

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