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こんな故事があります。イスラエルの王ダビデが、まだ若い時、主君の不興を買って、逃亡生活をしていました。彼を慕う部下たちを従えて、荒れ野で生活をしていましたが、部下たちを養うために、牧羊業者の家畜を、獣や盗人から守る仕事をしながら、露命をつないでいたのです。荒れ野に散在する洞穴に、身を隠しながら生活をしていたとき、その洞穴に、主君が、用足しのために入ってきたのです。
自分の命を狙う王の命を取るに、絶好の機会でした。しかし彼は、王の着物の裾を切り取っただけでした。それほどの機会があったのに、ダビデは、主君の命を取らなかったという証拠品を残したわけです。後ほど、彼は、その行為すら、油注がれた王に対してはいけないことだった、と言って悔やむのです。自分の主君が、どのやうな理不尽なことをしたとしても、自分の上に立てられた王への敬意を忘れなかったのです。
この出来事を思い出したのは、6年ほど前に、日本の国会周辺で、驚くほどの人を集めてデモが行われていました。そのデモに参加していた一人の学生が、ある集会で、当時の総理大臣に向かって、『お前はバカか!』と言ったからです。少なくとも、最高学府で学ぶ学生が、一国の政の責任者に向かって、<バカ呼ばわり>をしたという非常識さに驚いたのです。
まだ中国にいましたが、中国の方たちには、信じられない暴言だと感じておられた様です。『どんなことがあっても私たちは、そんなことを決して言いません!』と言っていました。自分の主義主張と合わない人でも、自分たちの生活や将来の安寧秩序を守ってくれる指導者に向かって、公の前で発する言葉ではないからです。「礼儀正しい日本人」との高い評価を持たれている、こちらのみなさんに、実に恥ずかしい思いをしたのです。
実は、この学生のことを調べましたら、私が学んだ学校の在校生だったのです。色々な人がいて好いのですが、こちらが恥ずかしくなって、みなさんに申し訳なく感じてしまいました。そして、もう一つ残念なのは、この彼の暴言を、まるで支持するように、マスコミが取り扱ったことです。それは、自分の思ってることを代弁してくれたように感じたからでしょうか。その暴言を吐く者は、「燃えるゲヘナ」に投げ込まれるほどの悪なのです。
若いみなさんは、一国の命運を握って労苦する指導者に、その務めのゆえに、敬意を払っていただきたいのです.何を思っても結構です。でも決して口にしてはいけない言葉があるからです。あのダビデの態度から学び、自らの足りなさ、未熟さを知って欲しいのです。そうしないと、戦後、みなさんの祖父母やご両親が築き上げ、獲得した日本への世界からの<高い評価>と<尊敬>を失ってしまうからです。あの学生は、大学院に学んだそうですが、もう社会人です。どんな今が彼にあるのでしょうか。
( イスラエルの国花「シクラメン」です)
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