出し渋りの秋風が

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 この時季の野草に、「エノコログサ」があります。バッタが好んで食べるのだソウ(草)で、あまり有名な草ではなさそうですが、漢字では「狗尾草」と書きます。草の穂が、犬の尻尾に似ているので、昔の人は、ソウ名付けたようです。

 日本語、とくに大和言葉には、「情緒」を感じさせる言葉や名称があって、それだけ聞いても、この年の異常な暑さを忘れさせてくれたのではないでしょうか。そう言った日本人の観察眼が素敵ですね。即物的で、慌てた様子もないゆとりが、昔はあったのでしょうか。

 ソウ言えば、鈴虫は、リンリンと鳴くのでしょうか、古語では「松虫草」、英語では、” bell cricket “ と言うのだそうで、英語圏でも、季節や場所に応じて粋な名付けがなされている様で、”poesy “ で、詩的で素敵な名前ではないでしょうか。

 鈴虫ですが、喉で鳴くのではなく、羽をこすり合わせる音が、鳴く音に聞こえてくるのを知らされて、驚いた子どもの頃を思い出します。

 どうも、虫や草の名には先人たちの生活のテンポには、穏やかさや余裕があったので、slow life、時間に追い迫られないで、悠々自適、悠々自得な暮らし振りが感じられて、『いいなー!」と思うのです。まさに、もうこの頃の自分の生活が、そんな感じです。

 どなたもソウなのですが、しなければならない仕事に、朝は起こされ、出掛けたり、机に向かったり、訪ねて来られる方と話したりしていたのです。在華中は、二つの街で過ごしたのですが、車を運転しませんでしたので、自転車と市バス、時々は知人の運転する車で出かけました。時間の流れが変わったのを感じたのです。

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 それに比べますと、この7年の北関東の生活は、実にslow pace になっているのです。今日は、家内の3ヶ月ほとの通院日で、電車に乗って、駅からはバスで行く予定です。図書館や市役所、買い物でのスーパーマーケット、たまにはラムレーズンを食べに行くのですが、二人で歩いていると、近所の方に、『仲がよくて!』と言われます。

 日常の義務から、医者通いに代わっていて、苦笑いをしています。この月曜日には、誘われてお絵描き会に参加しました。中学以来のことで、ワイワイガヤガヤしながら、手取り足取りで、5枚ほどのハガキに、水彩画を描いたのです。全然しなかったことをしている自分の変わりように、驚いています。

 下手な仕上がりですが、力作だとみずから思って、四人の子どもたちに出そうと宛名を書いたのですが、出し渋りの秋風が、やっと感じられる早朝です。今日の天気予報は、最高気温が27℃だそうで、やっと一息つけそうです。行って帰ります。

( ウイキペディアの「エノコクサ」、“ いらすとや “ の「鈴虫」です)

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